元王者が監修、サイクルベース開業 長野・豊丘

松下和彦
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 サイクリングからレースまで、自転車の魅力を発信する施設が長野県豊丘村にオープンした。「とよおか旅時間 ボンシャンスサイクルベース」。村の誘いを受けてプロデュースしたのは、自転車ロードレースの第一人者として国内外で活躍した福島晋一さん(49)だ。

 伊那谷を北から南に流れ下る天竜川の両岸に発達する段丘。左岸にある豊丘村は福島さんのインターバル練習の舞台だった。「上りでもがいて平地で休み、折り返さずに次の上りへ。バリエーションをつけられて、少し楽に苦しめた」

 そんな豊丘村内で5月29日、道の駅「南信州とよおかマルシェ」の隣に新施設のサイクルベースがオープンした。様々な自転車の貸し出しや販売、修理に加え、村の観光協会の窓口も兼ねる。サイクルツーリズムの拠点としてモデルコースも紹介。段丘上の名所へは電動アシスト付きのイーバイクを勧めている。

 オープン初日には、国際レース「ツアー・オブ・ジャパン」南信州ステージのコースを走るイベントがあった。飯田市までの往復約30キロ、起伏の激しい道のりに参加した20人は、ロードバイク持参の愛好家から施設のマウンテンバイクを借りた人まで様々だ。

 福島さんはこのレースで日本人初の総合優勝を成し遂げたが、南信州ステージでの優勝はない。出発前、参加者にこう語りかけた。「いろんな思い出があるコース。あの選手がここで転んで後ろの選手も……。現役時代はできなかった話もしながら、楽しく乗っていきましょう」

 大阪府出身で信州大学在学中に自転車競技を始めた福島さん。第一線で活躍しながら若手を育成するチーム「ボンシャンス」を結成し、2006年からは飯田市を拠点に本場欧州へ選手を派遣している。

 チームとしては世界で活躍する選手を育て、子どもたちにも練習の場を提供する。新しい施設と合わせて目指すのは「自転車文化の定着」だ。自転車を安全に楽しく、地元の人にこそ乗ってほしいと考える。「本場の欧州で自転車人口を2倍にするのは難しいけれど、日本にはまだまだ可能性がある」

 フランスでは町ごとに小学生の自転車教室があり、優劣は競わせず楽しさを教える。年間数千に上るレースには消防士や警察官の選手権もあり、仕事をしながら楽しむ「成熟した文化」があるという。

 サイクルベースは、チームのメンバーで、今春に村の地域おこし協力隊員になった矢野智志さん(36)と妻奈緒美さん(39)が運営を担当している。

 チームや施設の名前「ボンシャンス」(Bonne Chance)は、フランスのレースで仲間にかけてもらった言葉。英語なら「グッドラック」。福島さんは「やっとこの時がきた。やりたいことがいっぱいあって、わくわくしている」と話す。(松下和彦)