森ビルが虎ノ門で挑む、大企業発ベンチャー 誤算と勝算

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土屋亮
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 名だたる大企業の社内ベンチャー担当者が集まり、日々、意見を交わしながら革新的なビジネスを生みだす。昨年4月、5年越しでそんな新規事業を始めた森ビルの飛松健太郎(43)は「開業はしたが、これからどう運営していけばいいのか」と強いプレッシャーを感じていた。理由は新型コロナウイルス。東京をふくむ7都府県に緊急事態宣言が出され、肝心の担当者どうしが会うことができない。出ばなをくじかれた。

 新規事業の舞台は東京・虎ノ門。大企業が集積する大手町や丸の内に近く、官公庁が集まる霞が関もすぐ隣にある。森ビルは、新興IT企業が集う渋谷や六本木とは一線を画す「大企業発ベンチャー」の拠点を、再開発した36階建ての高層ビル内に設けた。

転職組の腕利き、100社まわった

 飛松は住宅メーカーからの転職組。2008年の入社後は、森ビルが所有するビルの入居企業を開拓する業務に携わり、六本木ヒルズにグリーやメルカリなどの成長著しいベンチャーを呼び込んだ腕利きだ。ARCH開業の半年ほど前から約100社の大企業をまわり、ARCHへの入居をかき口説いた。

 ビル4階を専有する3800平方メートルのフロアは、架け橋をイメージして「ARCH(アーチ)」と名づけられ、担当者間の交流を後押しするしかけが張り巡らされている。会議室は透明なガラス張りで、誰が中にいるか一目でわかる。会議室や応接室は入り口付近に集めるのがオフィス設計の定石とされるが、あえて20以上の部屋を点在させ、廊下を長くした。移動中の雑談を増やす試みだ。

 くつろいだ雰囲気で意見交換をしてもらおうと、入り口にはカフェ・バーを入れた。また、入居者には自分の位置情報を示す携帯用の電波発信器を渡した。出先にいるのか、施設内にいるのかが互いにわかるようにし、交流を促す意図だった。

 「どこも社内ベンチャーには苦労している。商機はある」。ARCH企画運営室長に就いた飛松は、開業準備をしながら自信を深めていた。

深めた自信、ひっくり返った

 そうした試みを根底からひっ…

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