不安募らす無国籍の働き手 まずは実態把握の仕組みを

東京経済部・藤崎麻里
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取材考記

 「コロナ禍だと、ますますどの国も守ってくれないような気がして」

 無国籍のまま日本で暮らす人たちをめぐる様々な問題を取材する中で出会った女性(27)は、私にそう話した。東京都内で生まれ育った女性の父は日本人、母はフィリピン出身。曲折の末に無国籍になってしまった母から生まれた女性は、無国籍の状態だ。それゆえ「手に職を」と考えて高校卒業後、パティシエになった。

 ただ、コロナ禍で飲食業は厳しい。無国籍のまま失職したら生活は保障されるか。再就職で不利にならないか。

 海外渡航や結婚の手続きもままならないのではないか。子どもも無国籍になる可能性があり、不安は尽きない。

 女性が生まれた1990年代、東南アジアから働きに来る女性が増え、90年に74人だった0~4歳の無国籍児の数は98年には942人となった。一時減ったが今また増えつつあり、過去3年で約3・5倍になった。

 子どもが無国籍になる背景には、母が非正規滞在の発覚を恐れて出生届を出さなかったり、日本人の男性が子を認知しなかったりなどの理由がある。婚外子に国籍を認めない国があることも、要因のひとつだ。

 実は、冒頭の女性の在留カードに「無国籍」の文字はなく、母の出身地である「フィリピン」とある。のちに登録されるだろうという前提で、外国人の母の出身地が書かれるからだ。だが国名が記載されると、本人も養育者も国籍があると思い込むことがあるという。日本政府はそうした無国籍者の実数を把握できておらず、統計上の数字は「氷山の一角」ともいえる。

 こうした問題について、上川陽子法相は4月の会見で「この国で生まれた子どもの権利の基盤が失われているなら問題だ。丁寧にいろいろな角度から取り組みたい」と話した。

 では、どうすればいいか。まずは正確な実態把握が必要で、在留カードの国籍欄は確認したうえで書かれる運用にするべきだろう。仏などでは難民認定のように無国籍を認定する機関などがある。日本でも認定の仕組みをきちんと整備することは、問題解決に向けた一歩として有効ではないだろうか。(東京経済部・藤崎麻里