梅雨に多い「普通じゃない肺炎」 その原因、カビかも

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染方史郎
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 九州から東海では例年になく早い梅雨入りとなりました。じめじめとしたこの時期に多いカビの病気をご紹介します。カビは真菌という微生物の俗称で、細菌ではありませんが、細菌と同様に病気の原因になります。

「普通じゃない肺炎」とは?

 今回ご紹介するのは「夏型過敏性肺炎」という病気です。肺炎という名前がついていますが、普通の肺炎とは異なります。

 普通の肺炎は、肺炎球菌などの細菌が原因となって起こる感染症ですが、夏型過敏性肺炎は、感染症ではなく、過敏性肺炎というアレルギーの一種で、主に「Trichosporon asahii(トリコスポロン・アサヒ)」というカビが原因となります。「過敏性」というのは、アレルギーという意味です。新聞社に気を使ったネーミングではありませんので、念のため。

 人は、1日に約2万回呼吸をしています。1回あたり約500ミリリットルなので、500ミリリットルペットボトル2万本分ということになります。人を含む動物は、生きるために酸素が必要なので、呼吸をすることで酸素を取り込んでいます。空気は、鼻から入って、気管、気管支、肺へと吸い込まれます。

 肺は、0・2ミリほどの肺胞と呼ばれる小さな袋がたくさん集まったものです。肺胞は細い血管(毛細血管)で取り囲まれています。肺胞のところで空気中の酸素が毛細血管に移動します。

 酸素は人が生きるために必要なものですが、空気中には、ちりやほこりなどとともにカビなどの病原体も含まれています。1日に数百~数千程度のカビを吸い込んでいると言われています。つまり、肺は、呼吸をするたびに常にカビなどの「悪者」にさらされているわけです。

 当然、カビを取り込みたくはありません。肺の中にカビが生えて困るという状況は普通は、ありません。エアコンのように洗っているわけではないのに、カビが生えないのは不思議ですね。肺胞は、必要な酸素だけを取り込むような仕組みがいくつかあるためです。

 例えば、肺胞には、「肺胞マクロファージ」という外から入ってきたカビなどの「悪者」を食べて処理する細胞が常にいます。肺胞と毛細血管の境界を国境にたとえると、肺胞マクロファージは国境警備隊のような役割を果たしています。カビは常習犯なので、すぐに捕らえられて処理されます。ただし、たばこを吸っている人などではうまく処理できないことがあります。

 カビのように、肺胞マクロファージですぐに処理されるような悪者だけではなく、肺炎球菌のような少し手ごわい悪者が侵入してくることがあります。肺胞マクロファージだけで処理できない場合には、肺胞の中で病原体が増えてしまい、さらに病原体は体の中に入ってこようとします。

 このような病原体の侵略を防ぐために、毛細血管から肺胞に、「好中球」と呼ばれる応援部隊が駆けつけます。肺胞の中で、好中球と細菌が戦っている状態が、普通の肺炎です。

 ところが肺炎が起こると、肺胞の中が病原体、好中球、血管からにじみ出てきた液体などで満たされるため、酸素が取り込めなくなります。「肺炎が起こると酸欠状態になる」ということです。この闘いが完全に終結するまで息苦しい状態が続くというわけです。

 前置きがずいぶん長くなりま…

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染方史郎

染方史郎(そめかた・しろう)大阪市立大学大学院医学研究科細菌学教授

本名・金子幸弘。1997年長崎大医学部卒。国立感染症研究所などを経て、2014年から現職。薬が効かない「薬剤耐性菌」の研究をしています。また、染方史郎の名前で、オリジナルキャラクター「バイキンズ®」で、細菌をわかりやすく伝えています。著書「染方史郎の楽しく覚えず好きになる 感じる細菌学x抗菌薬」(じほう)。オリジナルLINEスタンプも発売中。