自分の働き方に募る不安 仕分け作業で心をコントロール

中島美鈴
[PR]

 今月のコラムは「将来への漠然とした不安」に対する解決の仕方をテーマにしています。ADHDの大人に向けたコラムを連載していますが、何かを決断することが苦手であるという特徴は、実はADHDの方に多くみられるものなのです。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

今回は四つのステップの三つ目を解説

 「このままの働き方でいいんだろうか?」というモヤモヤを抱えたADHDの主婦リョウさん。漠然とした悩みを現実的な悩みにするために、今月のコラムでは、リョウさんの悩みを四つのステップで解決していきます。

 ①漠然と悩まず情報を収集しながら現実的に悩もう(第1回)

 ②欲しいゴールを明確にしよう(ハード→ソフトの法則)(前回)

 ③コントロールできるものとできないものを区別して不安を下げよう(今回)

 ④忘れてはいけないだめもと相談と交渉(次回)

 前回までに自分の「欲しいゴール」をハード面から明確にしました。しかし、リョウさんはまだ困った顔をしています。

不安の攻略法はズバリ

 リョウ「好き勝手に働く条件を書いたけど、実際こんな求人あるかな……。コロナもはやってるから、下手にたくさん働いてそこで感染したくないし。ああどうしよう。」

 そうですよね。自分が欲しいものがわかったところで、それがかなえられるかどうかは別の話です。それを皮切りに、次々に不安が出てきているリョウさんです。

 このような「不安」に歩みを止められてしまっては、リョウさんはまたモヤモヤに元通りです。「不安」の攻略法は、ずばり、仕分けです。

 コントロールできるものとできないものに仕分けるのです。

 一般的に不安という感情は、自分のコントロールのできないことに対する恐怖が根底にあります。お化け屋敷が怖いのは、いつどのタイミングで何が出てくるかわからないから怖いのです。自分にタイミングも内容もコントロールさせてもらえないし、その結果どんな事態になるか予測がつかないから怖いのです。

 反対に、この不安を減らすには、二つの方法があります。

 一つめは、コンロールできるものとできないものを仕分けするのです。お化け屋敷において、自分が歩むスピード、足を止めるタイミングはコントロールできるものです。

 しかし、おばけが出てくるタイミングや音の大きさ、アクションなどはコントロールできません。コントロールできないものに対して、なんとかコントロールしようとするのは無駄なことです。

 たとえば「お願いだから、おばけ、出てこないで」という願いは届きませんし、恐怖心をますますあおります。それよりは、自分が歩むスピード、耳を塞ぐことなどはコントロールできます。ここに力を注ぐべきでしょう。

 二つめは、恐ろしい結果のイメージを最後までしきって、対策を考えることです。「お化け屋敷には本当のおばけはいないのだから、脅かされた結果殺されるわけではない」とその結果を最後までイメージして心の準備をするといいでしょう。俗にいう「ひらきなおり」がこれにあたります。

できることにエネルギーを

 さて、リョウさんの話に戻しますと、

・自分の希望通りの求人票が出ないこと

・職場でコロナに感染すること

 このふたつはあまりリョウさんのコントロールできないことです。コロナ感染も対策は十分にすべきですが、完全に防ぎ切れるものではないでしょう。

 反対にリョウさんがこの状況でコントロールできるものはないでしょうか?

・求人をちょくちょくチェックすること

感染対策を行うこと

 これらのできることにエネルギーを注ぐのです。限りある時間とエネルギーは、有効に使いたいものです。とはいえ、不安は人間の最も根源的な感情。なかなかおさまってくれないものです。そうしたときには、メモにこう書いてください。

(悩んでも私にはどうしようもないもの)

・自分の希望通りの求人票が出ないこと

・職場でコロナに感染すること

(私がすること)

・求人をちょくちょくチェックすること

感染対策を行うこと

 頭の中だけでこう考えておくよりは、メモに書いて視覚化することで、「そうか、私がするべきことはこっちだ」と切り替えやすくなります。

*****************************:

著者の新刊が出ました。「ADHD脳で困ってる私がしあわせになる方法」(中島美鈴、主婦の友社)というADHD傾向でお悩みの女性向けのエッセー風の一般書です。https://www.amazon.co.jp/dp/4074466872/別ウインドウで開きます(中島美鈴)

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。