気になる職場見つけたら ダメもとですぐにアタック攻撃

中島美鈴
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 今月のコラムは「将来への漠然とした不安」に対する解決の仕方をテーマにしています。何かを決断することが苦手であるという特徴は、実はADHDの方に多くみられるものなのです。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。

今回は四つのステップの四つ目を解説

 「このままの働き方でいいんだろうか?」というモヤモヤを抱えたADHDの主婦リョウさん。漠然とした悩みを現実的な悩みにするために、今月のコラムでは、リョウさんの悩みを四つのステップで解決していきます。

 ①漠然と悩まず情報を収集しながら現実的に悩もう(第1回)

 ②欲しいゴールを明確にしよう(ハード→ソフトの法則)(2回)

 ③コントロールできるものとできないものを区別して不安を下げよう(前回)

 ④忘れてはいけないだめもと相談と交渉(今回)

 前回までに自分の「欲しいゴール」を明確にして、不安に対してもコントロールできるものとできないものに仕分けすることで、求人票をチェックするようになりました。でもいざ働き口を探そうとすると、なかなか希望のものが少なく、がっかりしていました。

 リョウ「結局私の希望する条件って他の主婦にとっても働きやすい条件だから、もう埋まっているってことかなあ。やっぱり難しいのかなあ。それに学童の条件に合わせて週に3日勤務なんて張り切って探してるけど、現状週に2日でへとへとになっている私にそんなことできるんだろうか?」

 リョウさん、またいろいろ悩んでいますね。

ある日見つけた求人票

 そんなある日、リョウさんはこんな求人票を見つけました。

リョウさんの自宅からなんと徒歩5分圏内で、週5日勤務する正社員の募集でした。仕事内容はリョウさんの経験のあるものでした。

リョウさんの希望する条件である、

・週に3日勤務 できれば9:00-15:00

・娘を市の学童に預ける

・今のところ給与は103万円未満がよくて、将来的には月に20万円ぐらい欲しい

自転車通勤15分以内

・今すぐではなく娘が中学生から正社員になれる制度がある

・子どもの授業参観などで休みやすい職場がいい

・経営のことを考える余裕はないので雇われていたい

とはだいぶ違います。でもリョウさんは、「徒歩圏内で自分でもできる仕事」があったことに目を輝かせています。それほど満員電車の通勤がストレスだったのでしょう。

 リョウさんは親友のアヤさんに相談してみました。

 リョウ「なかなかうまくいかないもんだよ。近所の会社が募集してて、もうね、歩いてでもいけるっていうのに、正社員の募集なの。あーー、こんな近くで働けたらほんといいのに!」

親友の提案にびっくり

 すると、アヤさんがびっくりするようなことを言いました。

 アヤ「それさ、電話で問い合わせてみたらいいんじゃない?どうしても働きたいし、将来的には正社員を目指したいけど、まずは週に3日からお願いできないだろうか?って」

 リョウさんは目を丸くしました。そんな考え思いつきもしませんでした。

 リョウ「そっか、交渉するってことね。嫌がられないかな?」

 アヤ「だめもとよ。向こうにとってもパートから雇って仕事ぶりをチェックしてから正社員にできるんだから、そんなに悪い話ではないんじゃない?」

 リョウ「正社員並みに仕事をふられたらどうしよう」

 アヤ「そのへんも交渉できるか、話し合ってみたらいいのよ。」

 リョウさんにとってはカルチャーショックでした。でもそれはやってみる価値がありそうです。交渉のためにも、自分が何時間なら働けるのかを事前に決めておいたのが役に立ちそうです。

家族の理解と協力

 アヤさんは付け加えました。

 アヤ「でもね。まずは家族で話し合ってみることよね。リョウだけの生活じゃないんだから、家族からの理解と協力は不可欠。私はこれをしなかったから、だいぶ旦那ともめたわ」

 これもまたリョウさんには目からうろこでした。自分一人でなんとかしなければと思い込んでいたのです。リョウさんは早速夫と娘に求人票を見せながら相談しました。

 夫は「うまくいけばリョウの負担が減りそうだから、その会社と交渉してみる価値があるんじゃないか」「仕事を変えると慣れないうちはストレスもあるだろうから、自分も早く仕事切り上げて家事と育児をがんばる」と言ってくれました。娘も「ママが近いところでお仕事していた方がうれしい」といいました。リョウさんはずいぶん勇気をもらって、転職に向けて動き出しました。

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中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず)臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。