AI使って診療費予測 三井物産社長が語るDXと医療

景気アンケート2021年春

聞き手・橋田正城
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 三井物産は世界最大級となる約3千万人の患者データを活用へ――。三井物産がDX(デジタルトランスフォーメーション)による病気のリスク予測や病院の経営効率化のビジネスをアジア全域で展開する。堀健一社長に狙いを聞いた。

 当社はIHHヘルスケア(マレーシア)というアジア最大の病院事業者に2011年から事業参画しています。約33%を出資する筆頭株主です。シンガポールやインド、中国など10カ国で事業を手がけ、約80病院(計約1万5千床)を保有しています。

 患者の診療や臨床検査、病院経営に関するデータが毎日積み上がり、約3千万人分に達しました。これらを匿名化し、統合する作業にシンガポールで着手しています。

 IHHはM&A(企業買収・合併)で事業規模を拡大してきたので、まず各病院で異なるデータのフォーマットを整えて使いやすくします。取り組みは各国の規制の範囲内で行い、医療情報は本人の同意が得られた場合に限り、匿名化したうえで個人情報の保護にも細心の注意を払って利用します。

 統合したデータはAI(人工知能)を使って分析します。活用方法の一つには、病院経営の効率化があり、検査や診断の精度とスピードを高めます。また、潜在的な罹患(りかん)リスク、重症化リスクも予測できます。予防や未病の改善にも使えるし、遠隔診療診断のサポートもできます。長期的には、日本の医療にも展開したいと思っています。心身ともに健康で豊かな暮らしを後押ししたいのです。

 すでにシンガポールでは20年から診療費予測サービスを実施しています。入院費が高額になるケースが多く、病院は前もって患者に、費用の目安を伝える義務があります。過去の診療費データをもとにアルゴリズムを開発し、高精度な診療費の見通しを提示することができています。

 こうしたビジネスを将来の収益エンジンの一つにしようと思っています。データを活用し、周辺事業や予防、未病の分野での投資先と連携します。ウェルネスオール三井(Wellness All Mitsui)といって、組織内の連携を進めています。23年3月期までに試験的な取り組みを始め、成果はその後、示すことになります。(聞き手・橋田正城)