第5回二つの山を運んだあなたは誰 巨人の正体探った先に霊山

有料会員記事

真野啓太
[PR]

 巨人の出没地を訪ねるシリーズ。今回は、巨人がうっかり落としていった二つの山が舞台です。二つの山には別々の伝説が残っており、一方は愛らしい名前の巨人が、もう一方は神様が、山を運んだと伝わっているようです。山の運搬人の正体とは。どう運んだのか。探りました。

 佐賀と福岡の県境をはさんで、よく似た二つの山がある。朝日山(標高132・9メートル)と花立山(はなたてやま=標高130・9メートル)だ。前者は佐賀県鳥栖市にあり、後者は福岡県小郡市筑前町にまたがっている。

 昔、天を衝(つ)く大男がこの二つの山を運ぼうとしたが、こぼしてしまい、今の場所に山がある、と伝わっている。

写真・図版
朝日山の中腹にある案内板に描かれた巨人「ウシどん」。棒が折れ、もっこで運んでいた山が落ちようとしている=佐賀県鳥栖市

 この民話が興味深いのは、それぞれの山で巨人の正体が異なるところだ。

 朝日山は「ウシどん」という妙な名前の巨人が、花立山は「権現様」、つまり神が山を運んだと言われている。巨人は何者か。どちらが運んだのか。

「ウシどん」が運んだ山へ

 朝日山はJR新鳥栖駅の目の前にある。平地にぽつんと盛りあがっている小山だ。ふもとから15分ほど、サッカーJ1サガン鳥栖の選手がトレーニングに使うという290段の階段を上りきると、そこが頂上だ。

写真・図版
朝日山。巨人「ウシどん」が落とした山と伝わる=佐賀県鳥栖市

 看板がある。「ウシどんの足跡」と題され、朝日山と花立山の成り立ちが書かれている。

 〈この二カ所の山はもともと兄弟の山であったのを、ウシどんという巨人が“もっこ”でかついで運ぼうとしていた途中、現在の位置に転げ落ちたものだという〉

 もっこは、棒につるして土砂などを運ぶ道具。山の中腹にあったウシどんの絵を見ると、雲より背の高い上裸の男が、山をザルのようなものにのせて運ぼうとしているが、棒が折れ、ひもが切れ、表情は悲しげだ。

写真・図版
朝日山の山頂。古代にはのろし台が置かれ、中世には城が築かれた。現在は巨人「ウシどん」の案内板がある=佐賀県鳥栖市

 「巨人が山を運ぼうとしたが、こぼれて、山ができた」という民話は、日本の各地にある。関東ではダイダラボッチと呼ばれる巨人が富士山を背負おうとして、失敗している。九州ではダイダラボッチの名を聞かなかったが、話の型は似ている。ウシどんは、親戚だろうか。

後半では巨人の背後にそびえる霊山の存在が浮かび上がります

 気になるのは「ウシ」の名…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。