司法解剖検査料水増し請求か 鑑定書に記載なく 近大

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 近畿大医学部法医学教室の元主任教授が大学の経費を不正受給したとされる事件で、元教授名義で実施された司法解剖について、委託した警察側が検査料を支払ったのに、検査結果が鑑定書に記載されていない例が複数あることが、捜査関係者への取材でわかった。大阪府警は、検査料が水増し請求されていた可能性があるとみて調べている。

 府警は11日、近畿大の経費計約1780万円を偽の領収書などで不正に受給したとして、元教授の巽(たつみ)信二容疑者(66)と元医療機器販売会社員の藤戸栄司容疑者(52)を詐欺と有印私文書偽造・同行使の疑いで大阪地検に送検した。

 司法解剖は、犯罪の疑いがある遺体について、警察の委託で実施され、死因を調べるもの。担当医が必要と判断すれば、血液や薬物などの検査も実施できる。担当医は簡易な結果を記した報告書を警察に提出した後、死因などを詳しく判断した鑑定書を出す。

 府警と近大も毎年更新で契約を結んでいる。2020年は細菌検査で1検体あたり1万8986円、薬毒物定性検査で同7万4781円といった単価にしており、大学側の請求に基づいて検査料が支払われる。原資は全額国費。

 近大に対して、府警は20年度(21年1月分まで)約3170万円▽19年度約3970万円の司法解剖検査料を払った。近大によると、大学は受け取った検査料の約9割を法医学教室の予算として配分した。

 捜査関係者によると、過去の司法解剖書類を調べたところ、報告書では実施されたことになっていた検査について、鑑定書に記載されていない例が複数あったという。鑑定書はいずれも巽容疑者名義。府警は、巽容疑者が報告書で検査をしたように装い、検査料を水増しして支払わせていた疑いもあるとみている。

 一方、巽容疑者の代理人弁護士は取材に対し、巽容疑者が「報告書の検査項目は主に法医学教室の別のスタッフが書いていた」と主張している、と説明した。

 岩瀬博太郎・千葉大大学院教授(法医学)は、「検査が本当に行われたかどうかを後からチェックすることは難しい。水増し請求はやろうと思えばできるだろう。医師のモラルの問題だ」と指摘する。

 背景として、多くの法医学教室で教授1人と助手数人の態勢になっている点を挙げる。「教室内部で教授に逆らえない空気になることはあり得る。地域ごとに法医学専門の大規模センターをつくるなど、組織化する対策が必要だ」と話す。