東京大空襲の記憶の継承めぐる作品 原爆の図丸木美術館

丸山ひかり
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 1990年代に東京都が検討した、東京大空襲の記録や証言などを集めた「東京都平和祈念館(仮称)」が、歴史認識をめぐる議論の末に凍結された問題に着目し、現代美術作家の藤井光さん(44)が手がけた作品「爆撃の記録」が、「原爆の図丸木美術館」(埼玉県東松山市)で13日まで展示されている。

 2階の小展示室の空間を使い、凍結前に検討されていた展示プランの資料や、都が集めた東京大空襲の被災者による証言の書き起こしなどで構成されている。

 東京都平和祈念館は、日本の加害の紹介などをめぐり議論が起き、99年に計画が凍結された。都は現在、収集資料や証言記録などを倉庫で保管している。

 藤井さんは5年前、都内の美術館の展覧会で、凍結前の展示プランをもとに空っぽのガラスケースなどを配し、記憶が継承されていないことへの問題提起を含んだ作品を発表。今回、この時の展示をもとに新たにつくった。

 藤井さんは「丸木位里・俊夫妻の『原爆の図』は原爆について雄弁に語っている。一方、祈念館の凍結で、東京大空襲に巻き込まれた当事者が語った言葉は世に出ない。その差をクローズアップした」という。

 「原爆の図丸木美術館」の岡村幸宣学芸員は「80年代はアジアへの加害責任という視点でも戦争体験をみることが重要視され、『原爆の図』の市民による展覧会にも、朝鮮人被爆者を題材にした作品『からす』が多く貸し出された。ただ90年代以降は逆の立場の意見が強まり、祈念館はその影響を受けた」と話す。

 展示にあわせ、東京大空襲について研究している社会学者の山本唯人さんが、個人で開設したウェブサイト「東京都平和祈念館アーカイブズ」(https://tokyopeacemuseum.amebaownd.com/別ウインドウで開きます)で13日まで、祈念館にまつわる資料などを公開している。(丸山ひかり)