ゴジラみたいに戦う!? 大学の池で新種の寄生バチ発見

森直由
【動画】水中に潜る新種の寄生バチを発見=大阪府立大学提供
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 水面で触角を使って水中のガの幼虫を見つけ出し、潜って水面に追い出すと卵を産みつける――そんな生態をもつ新種のハチが見つかった。発見した大阪府立大などの研究グループは、まるで怪獣ゴジラがモスラと戦う姿を連想させるとして、つけた名前は「ゴジラコマユバチ」だ。

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大阪府立大のキャンパスで発見された新種の「ゴジラコマユバチ」=同大学提供

 新種のハチは、ほかの昆虫に卵を産み、孵化(ふか)した幼虫が昆虫の体内で育つ寄生バチの仲間。体長3~4ミリで、大阪府立大中百舌鳥キャンパス(堺市)にある池で見つかった。研究グループの一員で、府立大大学院生命環境科学研究科の平井規央教授(50)=昆虫学=は「水生の寄生バチは非常に少なく、成虫が完全に水中に潜ることが確認されたのは、世界でも珍しい」と話す。

 平井教授によると、2015年ごろ、浮草を食べるガの幼虫の中から、珍しい寄生バチが出てくるという話を聞いた。平井教授を中心に4人で16年4月から、この寄生バチの研究を本格的に始めた。

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ゴジラコマユバチが見つかった菖蒲池と平井規央教授。今年はコロナ禍の影響でヨシなどを刈ることができず、池全体が草で覆われている=2021年6月4日、大阪府堺市、森直由撮影

 構内にある浮草の多い菖蒲(しょうぶ)池(広さ約200平方メートル)を調査。16年5月、大学院生だった神野哲行さん(28)が珍しい寄生バチを見つけた。翌年、京都市内で開かれた国際学会で、4人はこのハチの生態や特徴について発表した。

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大阪府立大のキャンパスで発見された新種のゴジラコマユバチ=同大学提供

 その後、ハチが新種かどうかを調べるため、カナダの昆虫研究者も加わり、5人でチームを結成。世界中の文献を調べたところ、新種と判明した。昨年10月には、国際的な学術誌にオンラインで掲載された。

 新種のハチの成虫は水中に潜ることができ、物につかまりやすいように、湾曲した長い爪を持つのが特徴だ。メスのハチは浮草の上から触角を使ってガの幼虫を探し、見つけると水中に潜って幼虫を水面上に追い出し、幼虫に産卵をする。

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①触角を使って水中のガの幼虫を探す=大阪府立大提供
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②水中に潜る=大阪府立大提供
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③ガの幼虫を水面上に追い出す=大阪府立大提供
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④水面に出てガの幼虫に卵を産む=大阪府立大提供

 「水面にいるガの幼虫を攻撃して産卵する様子が、日本を代表する怪獣『ゴジラ』が『モスラ(ガの怪獣)』と戦い、海面から出現する姿をほうふつさせる」という理由から、カナダの研究者が「ゴジラ」と名付けた。

 新種のハチは幼虫のとき、ガの幼虫の体内で育つ。産卵の後、ガの幼虫から出てくるまで10~16日間かかる。水面でサナギになり、1週間ほどで成虫に。

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大阪府立大のキャンパスで発見された新種の「ゴジラコマユバチ」=同大学提供

 成虫は花のミツなどを食べて、寿命は2週間ほどとみられる。最長で89秒間にわたり潜水できることも確認された。これまでに少なくとも大阪、京都の4カ所で生息が確認された。

 現在は会社員の神野さんは「優秀な研究者に出会えたことや、自然豊かなキャンパスを提供してくれた母校に感謝したい」。平井教授は「キャンパスに多様な生物がいることを証明できてよかった。このハチの生態を解明するため、さらに研究を続けていきたい」と話している。(森直由)