客の目当ては「天下の名水」、京都の老舗店がおすそ分け

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永井啓子
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古都ぶら

 梅雨の晴れ間、気温がぐんぐん上がり、じっとり汗ばむ。そんな京都市の街なかに、おいしい水が飲めるスポットが点在する。地下からわき出る井戸水で、さまざまな言い伝えが残る。マイボトルを片手に歩いてみた。(永井啓子)

 四条通に面した老舗和菓子店「亀屋良長」(京都市下京区)には、二百年以上の伝統を持つ和菓子以外に「お目当て」を持つ人も訪れる。店の脇で、筒から鉢へ滴っている水だ。そばに「醒ケ井(さめがい)」と書かれた石碑が立つ。

 ペットボトルを持った人が次々と水を入れていく。「ご飯を炊くときやコーヒー、お茶に使うと格別」と自営業の女性(49)が薦めてくれた。記者も飲んでみた。まろやかで、すっとのどを通っていく。

 8代目当主の吉村良和さん(47)によると、あんを炊いたり、求肥(ぎゅうひ)を練ったり、和菓子作りには良質な水が欠かせず、井戸からくみあげてきたという。

 それを醒ケ井と名付けたのは1991年ごろ。その約30年前の阪急京都線の地下工事の影響で井戸が枯れ、店の改築と同時に掘り直した時からだ。

天下三名水の一つ

 ネーミングの由来は、かつて堀川五条の南にあった井戸「左女牛井(さめがい)(醒ケ井)」。もとは源氏の館の井戸で、千利休らに愛用され、天下三名水の一つに数えられた。太平洋戦争中の建物疎開で埋められ、いまは石碑だけが残る。

 亀屋良長の先代が、新たな井戸で豊かな水脈を掘り当てたことから、和菓子に使うだけでなく、名水として地域の人々にお裾分けすることにしたという。

 「素材の香りが際立ちます」と吉村さん。あずきの煮汁を使った「あづき餅」(税込み216円)がお薦めと聞き、一ついただいた。ほんのり赤い餅に、きなこをかける。ふわっと柔らかく、小豆のやさしい風味がする。煮汁には小豆から溶け出したポリフェノールが含まれ、体にもいい。水のようにゆるい寒天を使ったあんみつ「醒ケ井」(同497円)も22日から販売する。

 店から徒歩8分の西洞院通三条下ルにも、天下三名水の一つがあった。「柳の水」だ(あと一つは宇治橋三の間の水)。利休が茶の湯に用い、日よけのため、そばに柳を植えたことから名がついたとも言われる。

 あたりの町名は柳水町(りゅうすいちょう)。現在は、黒染めを手がける「馬場染工業」(中京区)の井戸水が「柳の水」として住民に親しまれている。店の横の通路に井戸があり、営業中は自由にいただける。

 同社は1870(明治3年)…

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