逆境も「チャンスだと思う」 記者が見た阪神・原口文仁

辻隆徳
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 私のカバンには、ピンク色のブレスレットがぶらさがっている。阪神の原口文仁が「がん患者支援団体」に販売利益の全額を寄付しようと、2019年に作ったものだ。

 この年に阪神を担当し、大腸がんからの復活劇を見届けた。大病から復帰するだけで大変なことなのに、人のために何かできないかと行動する。どんな逆境もポジティブにとらえる力があると感じ入った。

 「これはチャンスだと思いました。健康診断の大切さや生きる喜びを、プロ野球選手としてみんなに伝えられるなって」。取材の中で一番印象に残っている言葉だ。

 昨年1月、和歌山県で開催された原口主催のチャリティーラン。私も参加し、走った。「グッチ(原口)の前向きな姿に勇気づけられる」。大勢のファンが原口とともに走り、口々に話していたことが思い出される。

 今季は「代打の切り札」として活躍する。先発で出場したいのが本音だろう。だが、野球ができる喜びを誰よりも知る29歳が腐ることはないはずだ。劣勢でもこの男ならなんとかしてくれる――。首位を走るチームで、94番の背中は一段と頼もしく見える。(辻隆徳)