「幻」のフランシス・ベーコン展、「謎」が残した問い

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編集委員・大西若人
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 今月1日、緊急事態宣言に伴う休業要請が緩和されたことを受け、東京都内の多くの美術館は展覧会を再開した。その中にあり、13日までの会期だった渋谷区立松濤美術館「フランシス・ベーコン バリー・ジュール・コレクションによる」展は再開することなく閉幕した。宣言延長の20日まで休館を続けるためだ。

 4月20日の開幕後に宣言が出され、内覧会も含め7日間で約1700人だけが見た「幻のベーコン展」になってしまった。同時に、「謎多きベーコン展」でもあった。

 評価も人気も高い英国の画家フランシス・ベーコン(1909~92)。展覧会は、ベーコンの近くに住んでいたジュール氏が、画家の死の直前に贈られたという大量の資料の一部を紹介するものだ。アルバムの台紙とみられる紙に描かれたドローイングには、ベーコンの代表作につながるような題材も見られた。このほか、描き込みや変形が加えられた雑誌、新聞掲載の紙片、初期作とされるキュービスム風の油彩画などが並んだ。

 報道関係者向けの内覧会で、担当の2人の学芸員からは少し意外な言葉が聞かれた。「(一部の資料は)他の人が関与したものも含まれる可能性があるとされる」「(油彩画は)周りの画家が絵を持ってきたこともありえる」「位置づけの不確かな資料もあり、玉石混交というのが専門家の評価ではないか」と説明し、ある意味で誠実に「コレクションを巡ってさまざまな議論がある」と明かしたのだった。

 ベーコンは人物の輪郭がゆが…

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