ワクチン接種後も油断せずに 感染対策が必要なわけは

酒井健司
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 新型コロナワクチンの接種がどんどん進んでいます。当院で予約を受け付けはじめたころは電話が殺到してどうなることやらと思いましたが、混乱したのは最初だけで、その後は順調です。先月に「しばらくは希望者がすぐにワクチン接種ができるという状況にはならないでしょう」と書いたのが噓のようです。私の家族も対象者はみな1回目のワクチン接種を済ませました。自治体によっては65歳未満の方も接種対象者になっていくでしょう。

 ただし、ワクチン接種したからと油断してはいけません。ワクチンを接種した人たち同士なら、マスクなしで会話したり、飲み会をしたり、カラオケに行ったりしたいところですが、引き続き、3密の回避やマスクの着用といった感染対策をお願いします。感染対策を緩めることができるのは周りの感染者が十分に減ってからです。

 日本で使用されているファイザー製およびモデルナ製のワクチンはいずれも効果が高く、臨床試験では2回の接種後の発症予防効果の有効率は約95%でした。ワクチンを打たなかったら100人が発症するところ、ワクチンを打っていれば5人に減ります。高い有効率ですが100%ではなく、ワクチンを接種しても感染することはあります。

 それに、変異株も心配です。感染者数が多いほどウイルスが変異する機会も多くなります。集団での感染者数が十分に減っていない状態で、ワクチンを接種したから大丈夫と感染対策を緩めると、ワクチンの免疫をすり抜ける変異株が生じ、数を増やしかねません。たとえばの話、感染者数が多いまま「ワクチンを接種した人は自由に旅行したり飲食したりしましょうキャンペーン」をやるのは、ワクチンをすり抜ける変異株を積極的に培養するようなものです。

 実際、海外ではワクチンの有効性が落ちる可能性のある変異株が報告されています。しかし幸いなことに、日本で使われているワクチンが全く効かない変異株はまだ知られていません。有効性が落ちるといっても70%以上は効きます。ただ、さらに変異が進めばもっとワクチンが効かなくなっていくかもしれません。

 大事なのはワクチンが効きにくい変異株をこれ以上広げず、ウイルスが変異する機会を減らすことです。油断なく従来通りの感染対策を継続しつつ、より多くの人がワクチンを接種すれば、必ず感染者数は減ります。そうすればさまざまな規制を緩めることができます。「自分はワクチンを接種したから大丈夫」ではなく「感染した人が十分に少なくなったから大丈夫」を目指しましょう。(酒井健司)

酒井健司

酒井健司(さかい・けんじ)内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。