第一人者の意地 リオ銀に完勝で五輪切符「当然でしょ」

金子智彦
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 レスリング東京オリンピック(五輪)代表決定プレーオフは12日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで男子フリースタイル57キロ級が行われ、2017年世界選手権優勝の高橋侑希(山梨学院大職)が16年リオデジャネイロ五輪銀の樋口黎(ミキハウス)に4―2で勝ち、代表に内定した。4月のアジア予選で計量失格した樋口と、代わりに5月の世界最終予選に出場して代表枠を獲得した高橋が争った。

妻のメッセージ身につけ、勝利

 高橋侑希のシングレット(試合着)の中には、前日サプライズでもらった家族のメッセージ入りハンカチがあった。「自分を信じて『いつも通り!』。今日はきっといい日になる」。妻・早耶架(さやか)さんの言葉が現実になった。

 両手で顔を覆いひざをついた樋口黎とは対照的に、高橋は勝利を冷静に受け止めた。「僕が取ってきた(五輪)切符なので当然でしょっていう感覚だった」

 先月の世界最終予選で優勝し、己が獲得した代表枠を譲るなどあり得ない。相手は、自分が学生時代につかみ損ねたリオデジャネイロ五輪で銀メダルに輝き、2年前の全日本選手権でも敗れた宿敵。いや、それ以上の思いがあった。

 減量苦から一度65キロ級に移った樋口と違い、高橋には日本の最軽量級を先導してきた自負がある。4月のアジア予選で体重オーバーの失態を犯した樋口に対し、「負けたくない」と燃えていた。「体重調整などの過程も大事。試合では経験値の差が出たのかな」

 27歳。レスリング選手としては若くない。今春から母校で後進を指導する。「コツコツ積み重ね、諦めなければ結果を出せることを示したかった」。遠回りの競技人生が最高の教材になった。

 「出場の壁、メダル獲得の壁、金メダルの壁。一つ一つ壁を打ち破っていくしかない」。五輪本番に向けて、第一人者の誇りを胸に練習を重ねる。(金子智彦)

 樋口 「みじんの油断もなく、全力で最初から最後まで挑んだ。何が一歩及ばなかったのか分からないが、自分の攻めるレスリングはできたと思う」

 たかはし・ゆうき 2016年から全日本選手権3連覇。17年世界選手権で日本勢36年ぶりの金、18年は3位。21年東京五輪世界最終予選1位。三重・いなべ総合学園高―山梨学院大出。ALSOK退社後、21年4月より同大職。159センチ、27歳。三重県出身。

レスリング東京五輪代表

 【男子フリー】57キロ級 高橋侑希(山梨学院大職)▽65キロ級 乙黒拓斗(自衛隊)▽74キロ級 乙黒圭祐(自衛隊)▽86キロ級 高谷惣亮(ALSOK)

 【男子グレコローマン】60キロ級 文田健一郎(ミキハウス)▽77キロ級 屋比久翔平(ALSOK)

 【女子】50キロ級 須崎優衣(早大)▽53キロ級 向田真優ジェイテクト)▽57キロ級 川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)▽62キロ級 川井友香子(ジャパンビバレッジ)▽68キロ級 土性沙羅(東新住建)▽76キロ級 皆川博恵(クリナップ)