「東京に巨大な穴ぼこが残る」高山明さんが危ぶむ五輪

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聞き手・山本悠理
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 東京五輪をめぐり、社会の分断が深まる。新型コロナの感染拡大を懸念して多数の市民が反対する一方、政府や組織委員会は開催に向けた姿勢を崩そうとしない。演劇ユニット「Port B」を主宰する高山明さんは「五輪は東京に巨大なボイド(穴ぼこ)を残しはしないか」と懸念を示す。これまで東京という都市を舞台として様々な作品を手がけてきた表現者は、現状に何を思うか。

 ――大都市「東京」から疎外される存在にまなざしを向けた作品を制作してきました。

 都市は当初から自分の表現における大きなテーマ。2010年の秋から冬にかけては、「完全避難マニュアル」という作品をつくりました。山手線を東京の早くて正確な時間を象徴するものとしてとらえ、29駅(当時)全てに架空の「避難所」を設けるというものです。そうした時間の流れに振り落とされる人々がいるのでは、との思いからでした。

 「完全避難マニュアル」を終えて間もなく東日本大震災があり、福島の原発事故にショックを受けました。震災直後に公演でウィーンに渡った際、ツベンテンドルフ原発のことを知りました。国民投票により、一度も使わないまま廃炉になった原発です。それを元に、「国民投票プロジェクト」を始動しました。数年続いたもので、東京と福島や東北の被災地、広島、長崎など全国各地をトラックで回り、中学生たちにインタビューしました。これは僕が東京という都市を相対化する上で、大きな意味を持ちました。

 福島や被災地の子たちは、大人の質問に対して、大人が求める回答をきちんと用意して話しているように感じました。東京は福島に原発の犠牲を強いると同時に、この子たちに政治的な振る舞いを強いてもいるのだ、と。

 特に五輪の開催が決まって以降の東京では、本来政治とは別のものであるはずの芸術やスポーツ、そして都市そのものも権力の道具となっていく、その力に絡め取られていく側面が強まったという印象があります。

 ――13年に五輪開催が決まる際も、「復興五輪」が喧伝(けんでん)されました。

 東京は関東大震災と東京大空…

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