厚労省が描く次の年金改革 基礎年金の財政悪化に一手

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石川春菜
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 「100年安心」をうたった2004年の年金改革。その後、度々の見直しが重ねられてきたが、いまだに大きな宿題が残っている。高齢者の生活を支えている基礎年金の財政悪化の問題だ。年金を所管する厚生労働省が公表したある「試算」が、2025年に予定されている次回の年金改革の方向性を示している、と受け止められている。保険料の金額を変えることなく基礎年金の目減りを防ぎ、厚生年金の加入者も含めて多くの人の年金水準が向上する、という改革案とは、いったいどのようなものなのか。年金の基本的な仕組みをおさらいしつつ、解き明かしたい。

不発のマクロ経済スライド

 日本の公的年金は、主に自営業者や非正規労働者、無職の人などが入る「国民年金」と、主に会社員や公務員らの働き手が入る「厚生年金」に、大きく分かれる。このうち国民年金は、加入期間(20~59歳)の40年間すべて保険料(21年度は月約1万7千円)を納めると、原則65歳から基礎年金(同月約6万5千円)が生涯、受け取れる。

 一方、厚生年金に入る人は、月収(標準報酬月額)の18.3%分の保険料を雇い主と折半して負担することで、「1階」と呼ばれる基礎年金に加え、「2階」と呼ばれる報酬比例部分が上乗せされてもらえる。

 日本の公的年金は、その時々の現役世代が納める保険料で高齢者を支える仕組みだ。少子高齢化で高齢者が増え、現役世代が減るなかで、今まで通りの水準の年金を払おうとすれば、現役世代の保険料負担は重くなる。負担を増やさなければ、年金財政が早く枯渇してしまう。

 そこで04年の年金改革で導入されたのが、少子高齢化に合わせて年金額を抑える「マクロ経済スライド」だった。マクロ経済スライドは、物価が上昇した時に、物価上昇率ほどには給付を増やさないことで年金額を抑える。その代わり、月々の保険料が一定以上には上がらないようにすることで、「際限なく保険料が高くなるのでは」という不安にこたえる仕組みだ。

写真・図版
年金手帳

 マクロ経済スライドは、1階と2階を別々に調整する。導入時には毎年の調整を重ねることで、いずれも23年度に終わる予定だった。

 しかし、誤算があった。

 物価が上がらないデフレが政府の目算よりも長く続いたことだった。マクロ経済スライドは物価の伸びよりも年金額の伸びを抑える仕組みのため、デフレ下では発動できない。発動はこれまでに3回にとどまり、21年度も発動は見送られた。

 マクロ経済スライドの終了の遅れによって、給付水準が抑制されないまま、想定したよりも受給者が「もらい過ぎ」ている状況が続くことになった。当然、財源は目減りする。その帳尻を合わせるため、マクロ経済スライドを当初の想定より長く続け、将来世代の受給水準を削ることになる。代表的な経済ケースをもとにした最新の試算によると、2階の報酬比例部分の調整が終わるのが25年度なのに対し、1階の基礎年金マクロ経済スライドが46年度まで続く見通しになった。

 基礎年金の調整期間が長くなるのは、報酬比例部分は賃金が下がると将来の給付額も少なくなるが、基礎年金は物価の水準に合わせる仕組みだったことにある。20年度までは賃金水準が下落しても物価が下落しなければ年金の水準を下げないルールだったこともあり、基礎年金の水準は高止まりしていた。

 基礎年金の調整が長引けばその分、報酬比例部分よりも給付水準の低下は著しくなる。年金の水準は、モデル世帯の「所得代替率」で表される。平均的な収入で40年働いた会社員と専業主婦の夫婦が、65歳で受け取り始めるときの世帯年金額が、そのときの現役世代の平均的な手取り月収(ボーナスを含む)の何%になるかを示す。この所得代替率でみると、調整が終わる46年度の年金水準は、厚生年金基礎年金+報酬比例部分)が約2割減なのに対し、基礎年金は同約3割減となる見通しだ。

厚労省の「追加試算」、2025年改革へ布石

 基礎年金は所得にかかわらず…

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