画家も知らない数奇な運命 堂本印象「戦艦大和守護神」

田中ゑれ奈
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 太平洋戦争末期、沖縄海上特攻の途上で沈没した戦艦大和。艦長室の「守護神」だったが出撃直前に運び出され、難を逃れた一枚の絵がこの夏、京都で公開されている。

 描かれているのは、奈良県にある大和(おおやまと)神社の神殿。墨の線だけで描く白描は東洋画の伝統技法だが、戦時下で貴重な絵の具を節約したい事情もあったのかと想像させる。戦艦大和の建造計画が極秘で進むなか、海軍は大和神社の分霊をまつろうと奈良県に発注。県の依頼を受け制作した日本画家・堂本印象も、真の意味は知らなかったようだ。

 「守護神」は出撃を前に、他の燃えやすいものと一緒に艦から降ろされた。神社の宮司の記憶によれば、海軍関係者が紫のふくさに包んで「魂を抜きに来た」。戦争画として進駐軍に接収されるのを避けて一時は病院に隠した後、海上自衛隊の教育参考館が収蔵。数奇な運命を刻むかのように「軍艦大和艦長室」と記されていた裏板は現在、行方知れずになっている。

 京都府立堂本印象美術館京都市北区、075・463・0007)の「生誕130年 堂本印象」展で9月26日まで公開中。祝休日をのぞく月曜と8月10日、9月21日は休み。一般510円など。(田中ゑれ奈)