台湾有事はあるのか 元国家安保局次長ら専門家の答えは

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 6月5日に開いたオンライン記者サロン「せめぎ合う米中 日本の針路は」では、台湾海峡を巡る米中の思惑や日本のとるべき対応について、安全保障を専門とする笹川平和財団上席研究員の渡部恒雄さんと元国家安全保障局次長の兼原信克さんに聞いた。

 4月の日米首脳会談の共同声明では、52年ぶりに「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記された。これに対し、台湾を「核心的利益」と位置づける中国は強く反発。さらに、その前月には、デービッドソン米インド太平洋軍司令官(当時)が上院公聴会で、「6年以内」の中国による台湾侵攻の可能性に言及するなど、米政権内では、台湾海峡を巡る中国の軍事的関与への警戒感が高まっている。

 「6年以内」の根拠はなにか。渡部さんは、中国軍が艦艇の建造を急ピッチで進めている点に着目し、「艦艇の規模で中国が米国より優位にたつタイミング」と指摘。バイデン政権がアフガニスタンからの米軍撤退を決めたことも「米国の軍事戦略の重心が欧州からインド太平洋地域に移っている動きの一環」とみる。

リーマンショックが契機

 米政権内で台湾有事への警戒感が出ている背景について、兼原さんは、「安全保障は相手の能力をまず見る。中国が(経済・軍事力ともに)大きくなりすぎて、(武力侵攻を)やろうと思えばできちゃうんじゃないかとみんな思い始めた」と指摘。それに加えて、習近平(シー・チンピン)指導部による香港での強権的な抑圧政策が警戒感をいっそう強めるきっかけになったと話す。

 こうした中国の高圧的な姿勢は、2008年のリーマン・ショックを契機に出始めた。兼原さんは、敗戦国から高度経済成長を経て、G7(主要7カ国)に初めて呼ばれた時の日本の高揚感になぞらえて、「G20(主要20カ国・地域)で突然、中国がヒーローになった。中国が世界経済を牽引(けんいん)するようになった。そこから中国は西側諸国が没落したと本気で思い始めた」と話す。

 台湾有事はほんとうに起きるのか。仮に起きた場合、日本の対応はどうなるのか。視聴者からはこうした疑問や質問が多く寄せられた。

 15年に成立した安全保障法制によれば、日本政府は三つの事態に即した対応を想定している。

 まず「日本への武力攻撃が発生した事態」(武力攻撃事態)と政府が認定すれば、首相が「防衛出動」を命じて日本が反撃することになる。つぎに、日本が直接攻撃を受けていなくても台湾海峡での米中軍事衝突が発生し、この状況が「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる」(存立危機事態)と政府が判断すれば、集団的自衛権を行使して自衛隊が武力行使できる。

 自衛隊が武力行使するケースにいたらない場合でも、米軍が軍事介入し、「重要影響事態」と政府が認定すれば、補給や捜索救助など米軍を後方支援することは可能となる。

 当時、安倍内閣で安保法制の成立に中心的役割を担った兼原さんは「事態認定ありきではない。まず相手(敵)の動きを見て、それによって自衛隊がどう行動するかを決める。そこから各省庁が何をするかを決め、その行動をとるためにどんな事態が必要かが決まる」と解説した。

記事後半では、記者サロンの様子をお伝えする動画がご覧になれます。

 兼原さんによれば、台湾の周…

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