思いつなぐ2年分の夏 球児と交流続けたヒロド歩美さん

構成・山口裕起
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 朝日放送(ABC)テレビアナウンサーのヒロド歩美さん(29)は、全国選手権大会期間中の高校野球密着番組「熱闘甲子園」で、2016年からキャスターを務める。大会が中止になった昨年は球児たちと手紙で交流を続けてきた。今年、「2年分の夏を伝えたい」と言う。

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 すごく心苦しかったです。昨年の3年生は、最後の夏に甲子園をめざすこともできずに引退しました。いつものように球児のみなさんの元気な声が聞けず、私も心にぽっかり穴が開いたような気持ちになりました。

 なにかできることはないか。そう思って全国各地の野球部に手紙を書きました。「頑張って」なんて言える立場ではありませんが、落ち込んでいるかもしれない球児たちの、ちょっとした気分転換になってくれたらいいなと思って。心の声を届けるには、メールやLINEよりも手紙が一番だと思いました。

 熱闘甲子園のキャスターを一緒に務めている古田敦也さんからも、立命大時代にドラフト指名漏れした時の悔しかった思いを教えてもらい、そのエピソードも書き込みました。「人生、頑張って切り開いてください」。古田さんからのエールです。

 3年生が卒業する今年3月まで送り続け、合計で500通になりました。宛先は以前、取材でお世話になった学校や気になった学校です。いただいた返事は、ファイルに入れて保管しています。部員一人ひとりからのメッセージや色紙を送ってくれた高校もありました。なかには、「もう野球をやめます」と書いていた球児も。改めて中止の重みを実感したひと言でした。

 いくつかの高校には実際に取材でお邪魔したり、オンラインで話を聞いたりしました。「野菜や豚なども元気に育っている姿を見て、自分たちもコロナに負けないという気持ちになりました」。甲子園交流試合に出場した帯広農(北海道)からのお返事です。昨年度限りでの閉校が決まっていた江陵(同)からの手紙は「これからも自分たちの甲子園を目指していきます」と結んでありました。

 私は女子校に通っていたこともあり、学生時代に高校球児との出会いはありませんでした。もともと野球に詳しくなく、入社時はプロ野球の全12球団を言えないほど。セ・リーグとパ・リーグの区別もつきませんでした。それが今では、高校野球の魅力にどっぷり浸っていて自分でも驚いています。

 高校野球は地方大会にこそ、熱いドラマがあると思っています。すべての学校に甲子園をめざす権利があります。決して強くなくても強豪校に立ち向かっていくチームの思いや、一投一打にかける気持ちが、懸命なプレーから伝わってきます。それでも甲子園に出られるのは1校だけ。どんな過程で切符をつかみ取るのかにも注目しています。想像するだけで胸が熱くなってきました。

 今年の選手たちは悔しい思いをした先輩たちを間近で見てきた世代です。私も手紙での交流を通じて、「しっかり伝えなければ」と身が引き締まりました。先輩たちが残した証しをつなぐ「2年分の夏」でもあります。ワクワクもドキドキも、2年分。全力で球場を駆け回ってください。(構成・山口裕起)

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 ひろど・あゆみ 1991年、兵庫県宝塚市生まれ。兵庫・小林聖心女子学院高、早大卒。2014年入社。「熱闘甲子園」のほか、「サンデーLIVE!!」などを担当する。