ミカン楽々運べて農家が笑顔 一輪車の電動化キット開発

滝沢貴大
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 農業や土木工事などで使われている手押しの一輪車のタイヤ部分を電動化するキットを、和歌山県湯浅町出身の男性が立ち上げたベンチャー企業が開発した。和歌山や愛媛のミカン農家を中心に、全国で活用され始めている。

 商品の名前は「E―Cat kit(イーキャットキット)」。手押し車の呼び名の「ねこ車」にちなんだ。商品はモーターが内蔵されたタイヤと操作するコントローラーで、既存の手押し車のタイヤを同商品と交換する仕組みで、販売されているほとんどの手押し車に対応できる。

 売り出したのは「CuboRex(キューボレックス)」(本社・東京都)。2016年に湯浅町出身の寺嶋瑞仁さん(28)が立ち上げた。幼いころから物作りが好きで、水鉄砲や弓矢など遊び道具を自作。和歌山高専に進学すると、ロボコンに打ち込んだ。長岡技術科学大学新潟県)に進学し、在学中に起業した。

 19年に経営工学が専門の嘉数正人さん(27)が会社に合流。このころから一輪車を電動化する商品開発が始まった。

 発想の原点は、寺嶋さんが中学・高専時代にミカン農家で収穫のアルバイトをした経験だった。「ミカンの運搬作業がきつくて、なんとか楽にできないかと思ったことを思い出しました」。収穫したミカンはカゴに入れて、山の斜面を手押し車で集積場所まで運ぶ。作業負担は大きく、電動化の需要があると思いついた。

 ミカン農家で使われている一輪車は規格が様々で、地元企業が開発した独自のものもある。ミカン以外の農作物の収穫にも使えるように工夫する必要もあった。寺嶋さんは「すべての一輪車に組み付けられるようにするのが難しかった。全国から一輪車を取り寄せて、条件を調べました」と話す。

 1年ほどかけて商品化にこぎつけ、20年10月から一般販売を始めた。JAの広報誌にも取り上げられるなど、全国で知名度はじわじわと上昇。今年5月時点で、県内で約150台、県外で約100台を販売した。県内はほとんどがミカン農家だが、県特産のウメの農家などでも導入されているという。

 いち早くキットを導入した湯浅町のミカン農家、井上信太郎さん(29)は「ミカン畑は急傾斜で車が入れず、運搬には一輪車を使ってきた。20キロほどのミカンを載せて何往復もするが、石に当たって止まったり、段差でつまずいたりするので、解消されればと導入した」。手持ちの一輪車はいつから使っているかもわからない年季ものだが、キットは簡単に取り付けることができた。「コントローラーを握るだけで転がり出す。押すというより、持って行ってもらう感じ。アルバイトの女子大学生も使っています」と話し、「めちゃくちゃ助かっています」と太鼓判を押した。

 嘉数さんは「一輪車以外にも活用できる」と意気込む。今後は新商品の開発に取り組みながら、県外や農業分野以外で知名度を高めていきたいとしている。

 希望小売価格は税込み14万3千円。問い合わせは同社ホームページの専用フォーム(https://cuborex.com/contactform/別ウインドウで開きます)か担当者の樋脇さん(090・8040・9719)へ。(滝沢貴大)