防衛施設の隣接地、外国人所有は7筆のみ 土地規制法案

フカボリ

成沢解語
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 土地規制法案は15日、参院内閣委員会で可決された。法案はもともと、防衛施設の周辺の土地を外国人や外国法人が買い占めることへの懸念に端を発する。だが防衛省が8年をかけて施設の隣接地を調べても、外国人の所有と思われるのは全国で7筆にとどまった。その事実を、どう見たらいいのか。

 防衛省の調査は、防衛省本庁舎や全国の自衛隊基地、駐屯地などの約630施設と、米軍基地や通信所など約20施設の双方の「隣接地」約6万筆が対象。所有者は約7万8920人(自衛隊施設約6万5330人、米軍施設約1万3590人)にのぼった。2013~17年度に1巡目が、17~20年度に2巡目が行われた。

 防衛省によると、所有者の名前が外国人を類推させたり、住所が外国にあると思われたりする土地は7筆だったという。内訳は、自衛隊関連が東京都23区内に5筆、京都府内に1筆、米軍関連が神奈川県内に1筆。具体的な場所や所有者の人数について、防衛省は明らかにできないとしている。

 今回の法案の骨格となった「国土利用の実態把握等に関する有識者会議」の提言では、航空自衛隊千歳基地(北海道千歳市)や海上自衛隊対馬防備隊(長崎県対馬市)の周辺で外国資本が土地を買い、「国民の間に不安や懸念が広がっている」としている。

 ただし、この調査では、どちらもそうした例は確認できなかった。調査は土地の境界画定を名目に登記簿や住宅地図をもとに行われ、隣接地以外は対象にしておらず、対象地でも登記上の所有者でしか確認していないからだ。

 このため防衛省の川嶋貴樹・政策立案総括審議官は3日の参院外交防衛委員会で「(いまの調査には)制約がある」とし、土地規制法案で調査の範囲が広がったり関係者への聞き取りもできるようになったりすることに期待をにじませた。岸信夫防衛相も同委で「防衛関係施設の機能発揮を万全にするという観点からも意義あるもの」と述べた。

 一方で、調査が意味するのは法案の必要性がないということで、立法事実に欠けるという指摘も国会では相次いだ。参院会派「沖縄の風」の伊波洋一議員は「隣接する6万筆のうちわずか7。そういった調査をやる理由があるのか大変疑問」(4月15日の参院外交防衛委員会)と述べた。

 法案では、土地の所有者などが基地機能を害する行為をした場合、罰則を科される。行為の例として、政府は電波妨害などを挙げている。

 だが、過去の電波妨害などをめぐっては、防衛省の土本英樹・整備計画局長が「これまで防衛施設周辺の土地の所有などで自衛隊や米軍の運用などに具体的に支障が生じるような事態は確認されていない」(同)としている。そもそも電波妨害などは既存法にも処罰規定がある。法案の特徴は、実際に妨害がなくても「明らかなおそれ」があれば勧告・命令・処罰の対象になることだ。

 参院内閣委で14日、参考人として意見を述べた馬奈木厳太郎弁護士は「(基地などの)運用に支障がないとされている中、抽象的なおそれだけで、これだけの権利制限や規制を行う。リスクとされるものの程度に比べてバランスを崩している」と指摘した。(成沢解語)

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