「復活するでしょう」 揺るがぬ稲葉監督の信頼に山崎は
今夏の東京オリンピック(五輪)で行われる野球の日本代表に、横浜DeNAベイスターズの山崎康晃投手(28)が内定した。昨季は不調に陥ったが、稲葉篤紀監督(48)は昨年末の単独インタビューで「来年、復活してくれるでしょう」と、代表選考には成績を反映させない姿勢を示していた。
「新型コロナウイルスの影響で開幕も遅れたし、日程も変則的になった。とにかくケガがないようにという思いで、1年間見ていました」
稲葉監督はインタビューで、そう語った。
過密な日程に配慮
昨季は3月20日に予定されていた開幕が約3カ月遅れ、6月19日に無観客で始まった。セ・パ交流戦が中止になるなどの影響で、試合数は「143」から「120」に減ったものの、基本的には毎週6試合が行われる過密な日程となった。
山崎に昨季について尋ねると、「スタートの時点から、いつもと違ったし、マウンドに立っている心境も、今までに感じたことがないものがあった」。
抑え投手として開幕を迎えたが、自身3試合目で黒星を喫した。7月下旬には1イニングに5失点。クローザーの座を三嶋一輝に譲り、中継ぎに回った。
40試合に登板し、0勝3敗6セーブ。防御率5・68。
不調の原因は「話せないことも、たくさんあります」と多くを語らなかったが、「ファンがあってのプロ野球だと、改めて思いました」。
山崎は常々「応援に、僕自身の力以上のものを引き出してもらっている」と言う。
コロナ禍に見舞われる前は、横浜スタジアムに登場曲が流れると、タオルを掲げたファンが総立ちになり、山崎はマウンドに向かっていた。だが無観客となり、圧倒的な声援を背にすることがなくなった。
「ずっともどかしい思いを抱えてきました。けど、少しずつお客さんが入ることで、ようやく力を出せるようになってきました」
プロ野球生活で初めて感じた物寂しさが、自身のパフォーマンスにも影響した面は、ありそうだ。
稲葉監督が見た今季の山崎康晃
「ちょっと康晃が見たい」
今年4月20日のDeNA―中日戦(横浜スタジアム)。試合中に報道陣の取材を受けた稲葉監督は、自ら山崎の名前を出した。ちょうどマウンドに上がるところだった。
今季は真っすぐの球速も150キロ台に乗り、2種類のツーシームを織り交ぜる投球が、さえている。当時の防御率は1点台。
稲葉監督に、今季の山崎をどう見ているかについて、尋ねた。
「戻ってきたように感じますね。打者の反応を見ても、嫌らしさが出てきたと感じます。ツーシームも、いいところから落とせるようになってきています」
昨季の成績だけを度外視すれば、日本代表のブルペン陣を任せられるだけの実績も実力も、十分に備わっている。
4月。山崎にインタビューした際、稲葉監督は復活を待っていることを伝えた。
「オリンピックに出たいという思いはもちろんあります。だけど今は、自分の成績に集中して、結果を残す立場。それが認められて『康晃、じゃあ24人の中に入ってくれ』となったら、もちろんいいですね」
日本代表への思いは、消えていなかった。(井上翔太)