高齢者ひとりも取り残さない 各地でワクチン接種支援

新型コロナウイルス

真田香菜子、重政紀元
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 【千葉】新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、高齢者が予約をとったり交通手段を確保したりするハードルが高いことが問題になっている。各地の自治会が独自に支援をする動きもみられるが、交通費の負担や要支援者の把握は困難で、支援には限界もある。行政の対応を求める声も上がっている。

松戸・常盤平団地

 「整理券が無いってどういうこと。自分で予約できないから来たのに」

 5日朝、松戸市の常盤平団地にある市民センターの前では、ワクチンの予約をめぐり約20人の住民が市職員に説明を求めていた。76歳以上の予約がこの日開始されたが、市はセンターに窓口を設置したものの、用意した50枚の整理券はあっという間になくなった。

 困っていた住民に対応したのは、団地自治会の役員山根由美さん(70)。8人を徒歩2分の自治会事務所に案内し、もう1人の役員と約1時間かけてネットで予約した。中には聴覚障害があり、電話が使えないというひとり暮らしの人もいた。山根さんは「意思疎通ができているか不安な方もいます」と難しさを話す。

 団地は建設から60年ほど経ち、都市部にあるが高齢化が進んでいる。ワクチン接種についても取り残しがないよう、代行した予約は100件以上にのぼる。

 さらに悩みの種となっているのが、接種会場への「足」の確保だ。同市では自宅周辺からの送迎バスやタクシー券などの補助制度が無いため、自治会役員や民生委員が付きそわざるを得ない事例が相次ぐ。

 同地区の民生委員、志鎌規子さん(72)が相談を受けた84歳の女性は、近所の会場の予約がとれず、遠方の会場を予約していた。足が悪いが、タクシーで往復すると6千円もかかる。志鎌さんは、電車で同行する予定にしていた。

 しかし数週間後、知人から近所の会場に空きが出ていることを知らされ、予約を変更。徒歩圏内の会場で接種できることになり、来月、徒歩で付き添う。「体の不自由な人は自宅近くで接種できるよう、行政に配慮をお願いしたい。せめて空き情報の届け方は工夫してほしい」と話す。

 民生委員らによる支援に期待の声は高まるが、コロナ禍で活動はしにくくなった。介助する側も受ける側も高齢で、互いに感染への不安も大きいためだ。福岡市北九州市などでは民生委員への優先接種があったが、多くの自治体では対象外。志鎌さんは「接種が受けられたら、私も(支援を受ける側の)相手も、互いに安心できる」という。

富津・金谷地区

 「ワクチン接種、予約したかい?」。富津市金谷地区の区長会長を務める嶌津澄夫さん(74)。担当地区の黒河心一さん(90)と妻萬寿子さん(87)宅を5月に訪れ、予約したことを確認すると笑顔を見せた。

 同地区は近隣にマザー牧場など観光施設がある。だが、過疎化が進み、高齢化率は50%超、独居世帯も多い。市はワクチン接種で移動手段がない高齢者にタクシー券(2千円分)を補助しているが、地区に一般タクシーは1台もない。

 このため嶌津さんは、市が85歳以上にワクチンの接種券の発送を始めた5月11日から、地区に7人いる区長に支援が必要な高齢者がいないか確認するように依頼。自身も担当地区にある46世帯を訪問した。

 そのうちの1軒は80代の独居の女性で、認知症があるため1人での行動は困難なケースだった。嶌津さんが理事を務める社会福祉法人が協議し、ボランティアで送り迎えをすることになった。地区全体で十数人が送迎を求めたという。

 地区に住む65歳以上の高齢者は約650人。区長が持つ災害時の要支援者名簿、民生委員が管理する独居高齢者の名簿を共有し、取り残される世帯がないように日頃から目を配っている。ワクチン接種では介護施設などとも連携、数日で対象者への対応を終えた。

 金谷を含む5地区で構成する天羽地区でこのような取り組みができているのは金谷だけだ。「どこまで住民でやるかは地域の考え方で強制はできない。本来は行政の仕事だと思うが……」

 自治体によっては介護プランづくりなどで地域の高齢者の事情に詳しいケアマネジャーに予約支援などを委託する動きもある。だが、地域介護の中核拠点である地域包括支援センターからは「人的に限界がある」という指摘もある。

 天羽地区のセンター長を務める藤野雅一さん(50)は、「介護が必要な人と、ワクチン接種で支援が必要な人は必ずしも同じではなく、地域の実情を知る区長らの力は不可欠。だが、どのように協力体制をつくるか、ほとんどの自治体は決まっていないのではないか」と話す。(真田香菜子、重政紀元)

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