日本政府に財産目録の提出命令 韓国地裁、慰安婦訴訟で

ソウル=鈴木拓也
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 韓国のソウル中央地裁が1月に元慰安婦や遺族ら12人への賠償を日本政府に命じた確定判決をめぐり、地裁が被告の日本政府に韓国内の財産目録を出すよう命じる決定をした。決定は9日付で、15日に訴訟関係者への取材で判明した。原告の訴訟費用確保に向けた日本政府の資産差し押さえについては、すでに別の裁判官が認めない決定を出しており、判断が揺れている。

 日本政府は、国家には他国の裁判権が及ばないとする国際法上の原則「主権免除」を盾にこの裁判を認めず、賠償にも応じない方針を示している。このため、原告側は日本政府の財産を差し押さえて賠償に充てることを検討。日本政府が韓国内に所有する財産を把握するため、財産開示を求める手続きを地裁に申し立てていた。財産目録の提出期限は、日本政府に決定書が届いた後に決まるため、示されていない。決定書は外交当局間を通じて送達するが、日本側は拒否するとみられる。

 9日付の決定書は、「元徴用工の慰謝料請求権は1965年の日韓請求権協定に含まれない」とした2018年の大法院(最高裁)判決を挙げ、「元慰安婦訴訟の原告にも請求権がある」と判断した。主権免除も、「重大な人権侵害には認められない」とした。また、決定は「差し押さえによる対日関係の悪化などの影響は司法が考慮することではない」としている。

 この裁判では、原告の訴訟費用確保のための日本政府の資産差し押さえについて、別の裁判官が「国際法違反の恐れがある」として認めない決定を出していた。このため、賠償に充てるための資産差し押さえも認められない可能性が高いとみられていたが、今回の決定はその予想を覆した。

 同地裁は4月には、別の元慰安婦訴訟で日本政府の主権免除を認め、原告の請求を却下する判決を言い渡した。(ソウル=鈴木拓也)