川の事故、「救助行動なし」が半数 ライフジャケットを

編集委員・中小路徹
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 まもなく夏のレジャーシーズン。気をつけなければいけないのが水難事故だ。子どもの水難死亡事故の約半数は川で発生しており、海や湖沼を大きく上回る。河川に関する調査・研究をする河川財団の分析からは、川における事故の傾向と予防の具体策が見えてくる。

 警察庁の統計によると、2003年~19年には水難で992人の子どもが亡くなったり、行方不明になったりした。発生は河川が48%、海が23%、湖沼が13%だった。

 「川は子どもにとって身近で気軽に遊びにいきやすい分、アクシデントにも遭いやすい」と、同財団の子どもの水辺サポートセンター主任研究員の菅原一成さんは話す。

 同財団では、警察庁の統計とは別に、03年~19年に川と湖、用水路など、海やプール以外で起こった全国の水難事故の情報を報道から収集。子どもと大人を合わせた3018件の事故を分析した。これらの事故の被害者は計4580人で、59%が死亡・行方不明。河川で78%、用水路で9%、ダムと湖沼で8%、ため池で4%が発生した。

 その結果、子どもの川遊びの事故については、パターンが年齢に応じて異なることがわかった。

 幼児、小学生に起因するキーワードは、「一人遊びで転落」「深みにはまる」「サンダルやボールを拾おうとする」などだ。

 これが中学生になると、「増水時に遊ぶ」「急な増水で中州に取り残される」「大きな川を渡ろうとする」「滝やせきへの飛び込み」が目立つ。冒険的な遊びが事故につながってしまうのだ。

 大人を含めた事故全体にも傾向がみえる。

 まず、発生場所。1位の琵琶湖に続き、2位長良川、3位多摩川、4位相模川、5位木曽川、6位荒川。大都市圏からのアクセスが良い川が上位になった。

 多発するピンポイントも存在する。過去10年間に3件以上の死亡事故が起こっているスポットは、全国に38カ所あった。キャンプ場がある荒川上流の長瀞渓谷(埼玉県長瀞町)や、バーベキューを楽しむ人が多い多摩川中流の釜の淵公園付近(東京都青梅市)、相模川中流の高田橋付近(相模原市)、長良川中流の千鳥橋付近(岐阜市)などだ。

 「川が曲がっていて流れが複雑なところや、渦を巻いて引き込まれると五輪選手並みの泳力がないと流れに逆らえないなどの特徴があります」と菅原さん。

 事故全体の発生時間は午後2時台が最多で、午後3時台が続く。キャンプ、バーベキューなど遊泳を目的とせずに訪れ、ライフジャケットなど川に入る備えをせず、食事や飲酒後に思わず、川に入ってしまうケースも少なくないという。

 大人がいても安心は担保できない。大人のグループの事故が38%、家族連れや大人に引率された子どものグループが24%あった。

 居合わせた人が手や棒をさしのべる、見失った同行者を探すために川に入るなどの救助行動がなかった事故が52%を占める。これは、「おぼれは周囲に気づかれにくい」「周囲が気づいた時には流されていた」ことの表れだ。救助行動があった場合には、その15%に同行者の二次被害が発生している。

 菅原さんは、「川の水難は強力な水圧で瞬間的に発生することを、まず知ってほしい。そして、おぼれた時、バタバタと助けを求める動作は、むしろ浮力を減少させる。だから、川遊びを楽しむ時は、頭を水面より上に持っていってくれるライフジャケットの着用が絶対」と強調する。

 近年、子どもについてはライフジャケット着用の意識は徐々に浸透し始めた様子はみられる。警察庁の統計をみると、19年の河川と湖沼における死者・行方不明者数は、子どもは17人で、09年と比べ、約4割に減っているからだ。ただ、大人は231人で、14%減にとどまっている。

 「子どもを助けようとするなどの大人の二次被害で、ライフジャケットをつけている例はほとんどない。大人もライフジャケットが必要なことを理解してほしい。全員がつければ、事故はかなり減ります」と菅原さんは言う。

 その他の対策として、「流れに対して直角に泳ぐと下流に流されるので、上流に向かって泳ぐ」「子どもより下流に大人がいるようにする」「晴れていても、急に増水することがある。気象情報を得ておく」などのアドバイスをする。

 一般社団法人「吉川慎之介記念基金」を設立し、子どもの事故予防への啓発活動をする吉川優子さんは、川遊びに行く人に、こう呼びかける。

 「川は岸からみた状態と足を踏み入れた状態では全然違います。川の危なさについて、情報を正しく知ってほしい」

 12年に、長男の慎之介君(当時5歳)が、愛媛県西条市の幼稚園のお泊まり保育での川遊び中に流され、亡くなった。幼稚園側は浮輪やライフジャケットを用意していなかった。事故当時は好天だったが、数時間前ににわか雨が降り、増水を予見すべき状況だった。

 吉川さんは「川には行かないということも予防の一つですが、川に親しむという選択肢を持っておくためにも、準備の必要性を共有してください」と話している。(編集委員・中小路徹