劇団支える鑑賞団体「存亡の機」 ある役者が送った言葉

有料会員記事

荻原千明
[PR]

 日本の演劇文化を支える「演劇鑑賞団体」が全国各地で解散や規模縮小に追い込まれている。高齢化や新型コロナウイルス感染拡大のあおりを受けているからだ。鑑賞団体は公演の場を提供する役割も担っており、劇団の衰退にもつながりかねない。

コロナ下の観劇ためらい 「家族に止められて」

 「この会員数では予算のやりくりができない」「コロナ下で勧誘も難しい」

 昨年12月以降、東京都立川市の演劇鑑賞団体「三多摩演劇をみる会」の事務所では役員9人が集まるたび、打開策を話し合ってきた。

 会員から集めた会費で劇団に公演料を支払うため、安定して運営するには会員800人が必要だ。いまは500人強。4月に会費を月2250円から月2500円に引き上げざるを得なかった。

 同会は1974年に発足し、91年には会員が3450人になった。しかし、高齢化で会員が減る中、新型コロナが直撃。年6回ある公演は昨年は3回にとどまり、開演しても「家族に止められた」などと、来場者が会員の60%弱に落ち込む回もあった。元代表の浦上雄次さん(84)は「行けないからやめるという人が出てしまう。存亡の機にある」。鑑賞団体は全国各地にあるが、首都圏でもこの1年で、複数の団体が幕を閉じた。

 三多摩演劇をみる会の高木美栄子事務局長は、「演劇鑑賞会には普段の観劇とも違う魅力がある」。会には公演する劇団から事前に台本が届く。それを元に作品の歴史的背景を学ぶ勉強会を開いたり、同じ原作の映画を見たりと、観劇にとどまらない。大道具の搬入を手伝い、俳優とふれ合う機会もある。「単なるお客さんでなく、より芝居に関われる。この楽しさを若者と共有したい」という。

 ただ、今年5月に閉会した前橋演劇鑑賞会(群馬)の副委員長だった池田栄一さん(73)は、若者の参加が難しい時代だと感じる。同会の始まりは62年の前橋勤労者演劇協議会。働くだけでない豊かさを求めて職場単位で入会したが、今の働く世代は、観劇に時間を回す余裕がないように見える。加えて、娯楽の多様化や交通の発達も影響しているとみる。「会員になると東京の一流の芝居が群馬でも見られるという憧れがあったが、今は簡単に東京へ見に行ける」と話す。

 演劇鑑賞団体の衰退は、都市…

この記事は有料会員記事です。残り1012文字有料会員になると続きをお読みいただけます。