「移民」の心、故郷の海に問う 西海出身田川さん写真展

榎本瑞希
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 長崎県西海市出身の写真家・田川基成さん(36)=東京都杉並区=が長崎の離島をめぐって撮りためた81点を昨秋、写真集「見果てぬ海」(赤々舎)にまとめた。テーマは「移動」。日本で暮らす外国人移民を撮りつづけてきた田川さんが30歳を機に故郷を旅し、人はなぜ海の向こうをめざすのか、渡った先で何を残すのか問いを重ねた。18日から長崎市のコクラヤギャラリーで個展を開く。

 6~15歳を過ごした松島(西海市)。五島灘を挟んで向き合う五島列島の島々――。田川さんは約4年にわたって島々をめぐった。アポイントはほとんどとらず、中判フィルムカメラを手に歩き回った。

 育った島を離れる船で、涙を流す学生がいた。五島列島の最西端を訪ねると、技能実習生が刺し網漁を支えていた。

 移動の歴史を刻む光景も撮った。キリスト教禁教期に島に逃れた潜伏キリシタンの子孫が歌う聖歌の譜面。えいえいと続く殉教者の慰霊。戦後、出稼ぎ労働に出た人の話も聞いた。

 島が次々と現れる長崎の海を旅するうちに、新しい住人と古い住人のせめぎあいの中で、土地に新しい文化が生まれてきたのだ、と感じた。「海と移民は切っても切れない関係にある」と得心した。

 田川さんと「移民」の縁は深い。父は西海市の旧大瀬戸町に日本赤十字社が建てたベトナム難民保護施設の元職員。幼いころ、山奥の施設で、難民の子どもとボールを蹴って遊んだ。

 北海道大学在学中に旅したイスラム圏の文化にひかれ、卒業後は旅行雑誌の編集をしながら東京の礼拝施設に通った。2018年、千葉県で暮らすバングラデシュ人の家族に密着した作品「ジャシム一家」で、新進写真家に贈られる三木淳賞を受賞した。永住権の申請を手伝ったり、子どもの入学式に同行したりしながら、「居候」の目線から日々を記録した作品だ。

 ジャシム一家と暮らすなかで、「離れて故郷を思う心」は自分にもあると気づいた。人前では長崎弁を話さない。けれど、東京の住まいから片道10時間かかる松島の海を、娘や息子に見せたいと思う。その共感が、「見果てぬ海」の土台になった。

 日本で働く外国人が増え、世間が「移民」に寄せる関心は高まっている。田川さんは「国内の歴史にも目を向ければ、ある意味身近な話だと感じてもらえると思う」と話している。

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 写真展「見果てぬ海」は18~22日、長崎市万屋町のコクラヤギャラリーで。午前10時半から午後6時半まで(最終日は午後5時まで)。写真集から13点を展示する。

 田川さんは難民支援協会のウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」(https://www.refugee.or.jp/fukuzatsu/別ウインドウで開きます)でも写真や文を発表している。(榎本瑞希)