性的少数者がみる知事選 県単位パートナーシップ制度を

植松敬
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 LGBTなど性的少数者の「理解増進」法案について、自民党が今通常国会への提出を見送った。知事選は終盤を迎えているが、政治に何を期待しているのか、当事者の声を聞いた。

 「県単位でのパートナーシップ宣誓制度を考えてほしいです」

 浜松市の竹かばん職人で、浜松TG(トランスジェンダー)研究会代表の鈴木げんさん(46)は、トランスジェンダー男性で、戸籍上の性別は女性。浜松市が昨年4月に県内で初めて制定したパートナーシップ宣誓制度で、パートナーの女性とともに宣誓第1号となった。

 同市のパートナーシップ宣誓制度は、戸籍上の結婚が選択できないカップルを市が公認する。市営住宅の入居資格となるほか、浜松いわた信用金庫では住宅ローンの審査を受ける際に同性パートナーも所得合算者や連帯債務者の対象にできるなど、民間のサービスも出始めている。浜松市では5月末時点で31組が公認され、県内では4月から富士市でも宣誓制度が始まった。

 課題も見えてきた。パートナーシップ宣誓制度で居住している市の公認を受けても、カップルが別の自治体に転居すれば宣誓書受領証などは返還することになり、自治体からの公認はなくなってしまう。鈴木さんは多くの当事者らとやりとりを重ねる中で、「規模の小さな自治体ほど当事者が地域の中でカミングアウトしにくい」とみている。このため「当事者が表に出てこず、うちの地域にはいないとみなされてしまう」と感じてきた。

 都道府県レベルではすでに茨城県大阪府群馬県がパートナーシップ宣誓制度を制定している。鈴木さんは「県内のどこに住んでいても自分らしく生きられるようにしたい。誰も差別されずに希望の持てる静岡県にしてほしい」。

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 浜松市のIT会社でプログラマーとして働く藤森咲紅(さく)さん(28)は、戸籍上は男性で性自認は女性。中学や高校では、男女別で定められた制服や頭髪に関する校則に違和感があったと振り返り、「本当に困っている子どもの声に耳を傾けてほしい」と訴える。

 小学3年生の頃、自分が男子として扱われることに「何かおかしい」と強く感じた。中学や高校では男子用の学生服を着て過ごしたが、「着ることで自分が男であると認めてしまうことがずっと苦しいと思っていた」と語る。

 浜松TG研究会が一昨年、浜松市内の市立中学校の校則を調査した結果では、すべての学校で男女別の制服が採用されていた。

 藤森さんは、県教委に対し、高校でも校則に悩む性的少数者がいることを知ってほしいとし、「自分が学生のときはモノを言えるタイプではなく、学校と交渉などはできなかったが、そういう子どもの方が多いと思う」と話す。

 大学院を卒業後、就職してから女性として生き始め、職場では「咲紅」という通称名を使うことが認められた。職場の女性の同意も得て女子トイレも利用する。「社会は少しずつ変わってきていて、学校も子どもが抱える生きづらさに向き合う必要がある」と考えている。

 知事選では性的少数者に関する議論は大きな争点にはなっていないが、「今も自分らしく生きられずに困っている子どもは確実にいる。他の大きな争点に隠れてしまうかもしれないけれど、当事者にとっては大きな問題であることを考えてほしい」。(植松敬)