令和の徳政令か中小企業再生か、過剰債務に私的整理指針

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津阪直樹、細見るい、西尾邦明
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 コロナ危機で苦しむ中小企業を支えるため、借入金負担の軽減策を政府が考える。金融機関同士で債務減免について話し合う「私的整理」の指針づくりなどを、近く決める成長戦略に盛り込む。事業再生を進めるねらいだが、将来の損失リスクを抱える金融機関側は「令和の徳政令になりかねない」と警戒する。

 「来年から始まる返済を考えると、本当に厳しい」

 東北地方の老舗旅館の社長はそう話す。コロナで団体客が減り、休業も実施。取引銀行から運転資金として、無利子・無担保(ゼロゼロ)融資を数千万円、昨年に追加で借り入れた。「感染が落ち着いても膨れた借金を返せるだけの収入が戻るとは思えない。事業転換で生き残りたいが、考える時間がもっとほしい」

 昨年末の企業の債務残高は622兆5千億円で前年から52兆円増加。民間調査会社によると、債務が過剰と感じる中小企業は3割超ある。三村明夫日本商工会議所会頭は「私的整理など円滑な事業再生への環境整備が急務だ」と訴える。

 裁判所の認可を受ける民事再生など法的整理とは違い、私的整理は金融機関の話し合いで返済の猶予や減免に応じる。取引先の営業債権は整理対象とならず、非公表の私的な手続きなので事業継続に有利で企業価値を維持しやすい。

 私的整理の指針は2001年にできている。ただ、全債権者の同意が原則。再生計画の作成後でないと返済を一時停止できず、債務超過解消も3年以内など中小企業は使いにくかった。

 そこで、政府は全員同意の条件緩和など法制面の検討を進める。中小企業が使いやすい指針づくりを全国銀行協会へ求める方針だ。返済の一時停止を再生計画の提出前にしたり、債務超過解消を5年以内としたりすることを考えてもらう。

 「過剰債務の対策とともにコスト構造の見直しや事業転換などもやらなければ新たな『徳政令』になりかねない。金融秩序にストレスがかかれば、長期的には副作用もある」と大手行幹部は警戒する。銀行界からは「私的整理で再生する企業はまれ。債権放棄で銀行が困れば公的資金を入れればよいという話なら乱暴だ」(全銀協関係者)と反発の声があがる。

 ゼロゼロ融資などの支援策で…

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