身長112cmの彼が死を前にセックスを自撮りしたわけ

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小峰健二
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 「今までにやれなかったことをやりたい」

 39歳の誕生日目前でステージ4のがんと診断され、男はそう考えた。先天性の難病で身長112センチの彼が求めたのは、セックスと純愛だった。

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「愛について語るときにイケダの語ること」の場面から (C)2021 愛について語るときにイケダの語ること

 2014年のこと。テレビドラマ「相棒」などを手がける脚本家の真野勝成は、大学時代からの友人である池田英彦から提案を受けた。「僕自身を映画にしたい」と。

 骨の疾患である軟骨無形成症で身長が低く、手足が短かった池田は、少し前、ステージ4のスキルス性胃がんと診断された。何も対処しなければ、生きられるのはあと2カ月と医師に告げられたという。

 抗がん剤治療などによる闘病生活を始めるとともに、若くして死を予感することになった彼は、やり残したことがないように生き抜くと決意していた。

 生まれついての疾患がありつつも、真野の目には池田は「普通の青年」として映っていた。

 スポーツタイプの車を駆り、身なりにも人一倍、気をつかう。帽子はボルサリーノ、めがねはルノアと、いずれも海外の高級ブランド品を身につけていた。さらに、好みの既製服を買い求めては、個人経営の洋裁店で仕立て直していた。

 人を引きつける魅力があり、匂い立つような色気があった。それは池田自身も自覚していた。恋人とのデートや性愛の経験は乏しかったが、この体でなければ「鼻持ちならないプレーボーイで、ひとを見下すようなイヤなやつになっていたかも」。池田本人がそう言っていたのを、真野は覚えている。

 池田は神奈川県相模原市役所で働き、「高い知性や収入があり、真面目な社会人としての一面があった」。一方で、男友達が集まる場では、低俗な話も繰り出す、人なつっこさも持ち合わせていた。「いわゆるホモソーシャルな会話はよくしていた。普通と言えば、ごく普通の男だった」と真野。

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「愛について語るときにイケダの語ること」の場面から。ステージ4のがんが判明し、池田英彦は自身の姿を撮影することにした (C)2021 愛について語るときにイケダの語ること

 いつもユーモアを忘れない池田だったが、がんと診断されてうろたえていた。そして、性愛への欲望を率直に口にする。

 女性との性交を自分で記録したい。

 そして、女性とのデートも撮りたい、と。

 それが、池田の「やり残したこと」だった。

 池田は生き急ぐように、その日限りの女性との性交を、ハンディーカメラで自撮りし続けた。一回り大きな女性とキスし、体を合わせる。

 池田はその映像を後に見返し…

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