ウザくてもダサくても 父の日に読む「ひととき」名作選

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朝日新聞ポッドキャスト 父の日に読むひととき(前編)

 6月20日は父の日。70年の歴史がある朝日新聞生活面の投稿欄「ひととき」から、「父」にまつわる印象深い作品を、朗読を交えてご紹介します。投稿を選んだ担当記者の佐藤啓介(東京本社)と松尾由紀(大阪本社)に、MC大野由衣が、その理由などを聞きました。朝日新聞ポッドキャストでお聞き下さい。

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        ◇

「オジサン」でいいんだョ

 私は今17歳。難しい年ごろ。お父さんとは、あまり積極的に話さないね。

 でもお父さんはそんな私の気を引きたいのか、今どきの流行やアイドルを知ろうと必死だね。でも、しょせんオジサンはオジサン。やはり若者にはついていけないのだよ。

 テレビを見ていて俳優の反町隆史竹野内豊の区別がつかない。歌手の鈴木あみと浜崎あゆみを反対に覚えてしまう。それでも私のアイドル雑誌を真剣に読んで、わけのわからない言葉だらけでも、とりあえず暗記して私の会話に合わせようとする。

 いいんだってば、そんな無理しなくても。嫌いで話さないんじゃないんだから。

 そういう年ごろなの! いいじゃない、「ダサイオジサン」でも「超ウザーイ」とコギャルに言われても。私たち若者が生きていく土台を作ってくれたのは、おじいさんや「オジサン」たちなのだから。

 私がこうして生活していけるのも、お父さんが一生懸命働いてくれているから。本当に感謝しています。

 でもね、ふろ上がりにカーテンも閉めず裸でいるのはどうだろう。寝る前にお父さんの腹が出た裸見てもね。ちょっと夢見が悪いのだよ。

 それと、新聞はほかの人も読むのだからクシャクシャにしないで、きれいに読んでよね。まったく、やせるために散歩して、その後にビール飲んでたら意味ないでしょ? 本当にお酒はほどほどにしてよね! お母さんも心配してるよ。

 生意気な娘より。

(千葉県 高校生 17歳)

「がんばっている」お父さん

大野:2000年1月の投稿です。

 父の日というと、実は私は子どもの頃、複雑な気持ちで迎えていました。というのも、私の誕生日が近くて、父の日と一緒にお祝いされてしまう。一緒だと喜んでいた時期もありましたが、だんだん反発心をもちはじめたのが中高生のころ。ちょうどこの投稿があった2000年、私は15歳でした。投稿者は17歳で、「『オジサン』でいいんだョ」なんて言えるのは、ちょっとお姉さんだからなんだろうなと思いました。

佐藤:ギャル言葉みたいなのがいっぱい入っていて、文章で読んでも面白かったんですが、朗読で聞いてもいいですね。

松尾:「超ウザーイ」とか「コギャル」とか。最近では聞かなくなりましたね。

大野:折々の投稿にこういった「イマドキの言葉」が入ってきますよね。そういった流行の言葉を使おうとして、アイドル雑誌を読み込んで、なんとか娘と話そうとするお父さんたちって、今もいるんだろうなと。

佐藤:同性目線としては、「お父さんがんばってるな」と思います。

松尾:今だとキンプリとかBTSとか。

大野:「全員一緒の顔に見える」と私の世代でも思うんですけど、きっと今のお父さんたちもがんばってらっしゃる方はいるはず。

松尾:そして17歳でこれを送ってくださった素敵な娘さん。文章も上手で。

大野:朗読を担当したのですが、読んでいても楽しかったです。

松尾:「新聞をクシャクシャに」してとありますが、その新聞に娘の投稿が載っているのを発見したお父さんはどうだったでしょうね。

佐藤:こっぱずかしいのと、もしかしたら、ちょっぴりうれしいのと。

大野:続いても、多感な時期の娘と何とか交流しようという、いとおしいお父さんの姿を描いた投稿です。

佐藤:1997年3月の投稿で「父との旅行」というタイトルです。

父との旅行

 毎年この時期になると思い出すことがある。

 もう30年近くも前、私は高…

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