タリバーンが禁じる女性の権利 少女たちは歌で抵抗した

アサイア・ハマジー記者、ハシュテ・ソブフから
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 NPOのスパークニュース(パリ)の呼びかけで、世界13カ国の報道機関15社がジェンダー平等社会の実現に向けた特集「Towards Equality」を展開します。新型コロナウイルスの世界的流行で深刻化する、根強い男女差別や職場、家庭における「男らしさ」「女らしさ」という固定観念――。各国のジェンダー平等の最前線の取り組みに関する記事を世界で同時発信していきます。朝日新聞では紙面とともに、朝日新聞デジタルでも随時、記事を掲載します。今回はアフガニスタンのメディア「ハシュテ・ソブフ」の記事を掲載します。

 長期にわたる戦争で、アフガニスタンの教育システムは全体的にもろくなった。政治権力への野心やイスラム過激主義は教育を政治問題化し、主義主張を学校に持ち込もうとする人々もいる。政府は公式には女子教育に好意的だが、特定の地域ではいまも学校に通うことを制限されている女子たちがいる。

 ジェンダー平等は、憲法の上では保障されている。しかし、現実には深刻な欠陥を抱えている。教育省のナジバ・アリアン報道官によると、国内にいる970万人の生徒のうち女子は42%。一方、約370万人の子どもたちは学校に通っておらず、その6割を女子が占める。

 アリアンさんによると、学校に通うことが最も困難なのは南部と東部の州で、治安だけでなく、部族や伝統的な習慣も理由に挙げられるという。

 これらの地域のほとんどはタリバーンの支配下にある。タリバーンは1990年代にアフガニスタンを支配し、いまだに女子教育に反対している。過去20年間につくられた学校は、武装勢力によって破壊されているのが現状だ。

 こういった課題に直面しながら、女性たちは自らの権利のために闘い、成果も上げてきた。

 2015年、教育省が女子生徒の制服を、長くて暗い色の体を覆う衣類にしようと計画し、イスラム過激派のような衣服だと物議を醸した。

 市民活動家たちは、過激主義を助長するだけでなく、夏に着るには暑すぎると異議を唱え、教育省は計画断念に追い込まれた。

 保守的で部族の習慣が残る地域では、しばしば高温の中でも、少女たちは体や顔まで覆う長くて暗い色の服を着ており、学校に通ったり授業に集中したりすることが困難になっている。

 いま、教育環境のジェンダー平等を巡る闘いは新たな色彩を帯びている。それは「マーリフ(教育)合唱キャンペーン」がネット上で展開されたためだ。

 キャンペーンのきっかけは、教育省のある部署が出した一通の通達。13歳以上の女子生徒が学校の合唱団の一員として公共の場や男性の前で歌うことを禁じる内容だった。

 コロナ禍のため、抗議活動はネット上で、自発的かつリーダー不在のまま、斬新な形で始まった。

 100人以上の女性が、子供時代の歌をうたう動画を投稿。陰鬱(いんうつ)なタリバーン時代が終わった20年後にもなって、なぜ女子生徒が歌うことを禁じられるのかと問いかけた。

 世論から幅広く長期的な支持を集め、政府はまたも撤回することに。教育省はこの計画を「省の公式な立場と方針を反映したものではない」とする声明を出すはめになった。アシュラフ・ガニ大統領の顧問であるワヒド・オマル氏は「いかなる個人や組織も、市民に制限をかけることは許されない。(それは)国の憲法の精神に反している」と語った。

 今年初めには、政府が小学校の最初の3年間、学校とイスラム教礼拝所(モスク)を統合しようと試みた。タリバーンのようなイスラム過激派に対抗する影響力を得るためだったとみられるが、これもネットで抗議を受け、すぐに中止となった。教育相は、学校のない地域で教育を受けられるようにするための計画で、誤った解釈をされたと語った。

 合唱キャンペーンで歌った女性活動家の一人、ファリハ・エサルさんは「初等教育の3年間、学校とモスクを統合しようという計画も、13歳以上の女子生徒に学校で歌うことを禁じる計画も、アフガニスタンの教育を過激化、『タリバーン化』するための試みだ」と話す。

 外国軍の撤退で内戦が激化する可能性があるなか、タリバーンの影響力への懸念が深刻だとし、「黙ってはいられない。過激派が教育分野で影響力を持つことを阻止するために立ち上がる。今回の活動は成功したが、政治的な決定が女性を排除することがないよう、ジェンダー平等を確実にするためのより構造的な仕掛けが必要だ」とも語った。

 教育専門家のグラム・ダストギル・ムニル氏は、モスクでの子供の教育や女子の歌唱禁止といった過激派的な取り組みを激しく批判したため、公立学校での教職を停職にされたという。教育分野の地位や役職が専門性ではなく、政治的なつながりによって割り当てられていると指摘。ジェンダー平等を確立し、学校から政治色を排除するためには、人事は政治的なつながりにとらわれるべきではないとする。

 合唱キャンペーンは、アフガニスタンジェンダー平等のために闘う市民社会の成功例のひとつだ。しかし、教育分野でのジェンダー平等を担保するためには、長期にわたる行動計画が求められている。女性教員の割合を高め、より多くの女子たちが学校に通えるよう、特にへき地の家庭の関心を高める必要がある。(アサイア・ハマジー記者、ハシュテ・ソブフから)

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男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ]