女性の専門家をもっとメディアに データベースで後押し

サラ・スミット記者、メール・アンド・ガーディアンから
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 NPOのスパークニュース(パリ)の呼びかけで、世界13カ国の報道機関15社がジェンダー平等社会の実現に向けた特集「Towards Equality」を展開します。新型コロナウイルスの世界的流行で深刻化する、根強い男女差別や職場、家庭における「男らしさ」「女らしさ」という固定観念――。各国のジェンダー平等の最前線の取り組みに関する記事を世界で同時発信していきます。朝日新聞では紙面とともに、朝日新聞デジタルでも随時、記事を掲載します。今回は南アフリカのメディア「メール・アンド・ガーディアン」の記事を掲載します。

 メディアで取り上げられる人物のジェンダー格差をなくそうと、南アフリカのNPO「クオート・ディス・ウーマン」(QTW)が女性の専門家のデータベースを報道関係者に提供している。

 「女性の意見をメディアで見ることが少ないので、記者たちから抵抗されるだろうと思っていた。でも実際は逆でした」とQTWの創設者、キャシー・マグロビさん(50)は言う。

 QTWは2019年に創設。研究者や企業トップといった女性の専門家のオンラインデータベースを作り、報道機関が無料で使えるようにした。

 「新聞やネットでニュースを読んでも、ラジオを聴いても、いつも男性の意見ばかり。それも、数人の同じ男性専門家が繰り返し引用されていました」

 QTWの膨大なデータベースを見れば明らかだが、専門家の女性はもちろん存在する。だが、メディアに登場する数はまだ少ない。

 新型コロナウイルスをめぐる国内メディアの報道を調査したヨハネスブルクのNGO「メディア・モニタリング・アフリカ」の報告書によると、新型コロナ関連の報道で引用された情報源のうち、女性の割合はたった21%だった。

 別の報告書では、ニュースが「男性視点に偏っている」ことも分かった。南ア、インド、ケニア、ナイジェリア、英、米の計6カ国の報道を分析したこの調査によると、新型コロナ関連の記事のなかで、最も読まれた175本の記事に引用された専門家のうち女性は19%。4万4千本以上の記事を対象にした詳細な分析では、女性が主な取材対象として取り上げられる見込みは男性に比べて米国で5分の1、南アとナイジェリアでは4分の1、インド、ケニア、英国では3分の1ほどだった。

 「メディアに取り上げられる女性は、専門家や権力者としてではなく、個人的な意見を話す人やコロナ禍の被害者として描かれることが多い」と報告書は指摘する。

 メディアで女性が取り上げられない背景には、メディア内部の構造や偏見など、様々な原因があるとマグロビさんは考える。

 さらに、記者が生活のために苦労しながら仕事をしているという事実も関係している。

 「記者は働き過ぎ。様々なプラットフォーム向けに発信し、編集部の規模もかなり縮小しているため、より多くの締め切りに追われている」とマグロビさんは話す。「記者はインタビューを受けてくれる相手を寄せ集めるしかない。メディアに登場する事情通というのは、最も声が大きい人。それは残念ながら、たいてい男性なのです」

 QTWでは、ジェンダーバランスのとれた報道をするよう報道機関に働きかけたり、データベースに掲載されている女性専門家を登場させることが重要なのだと伝えたりもしている。マグロビさんは言う。「メディアで話す機会は最大限生かした方がいい。自分で意見を表明することの大切さに気づくことができるから」

 QTWのデータベースには現在、350人以上の女性専門家が登録され、470人以上の記者が利用しているという。

 しかし、資金が乏しい中、コロナ禍が打撃となった。現在はQTWに信頼を寄せる専門家や研究者からの寄付、7人のボランティアの協力で運営を続けている。

 「(コロナ禍で)女性が離職せざるをえないという問題がある。専門家やプロの女性が減ってしまうと社会がどうなるのか。考えると寒気がします」

 ただ、マグロビさんはコロナ禍のさなかも記者がデータベースにアクセスできる状態だったことを、ありがたいと考えている。

 「いま声を上げている女性たちが、次の世代のために道を作っていることに感謝しています。彼女たちは、女性が後に続くことができるような下地を整えてくれているのです」(サラ・スミット記者、メール・アンド・ガーディアンから)

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男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ]