若者を信じよう 文句を言う前に(笑ってる場合かヒゲ 水曜どうでしょう的思考)
藤村忠寿(HTB「水曜どうでしょう」チーフディレクター)
大学時代の話です。授業にはほとんど出ず、もっぱら生活の中心はラグビー部でした。熱心に練習はしていたものの、それ以外はもっぱら部の連中と無為な時間を過ごしていました。
あれはちょうど今ぐらいの時期だったでしょうか、ラグビー部の同期数人で部屋飲みをしていたんですけども、ヒマに任せて友人の顔に僕が落書きを始めたんですね。絵の具を使って、はやっていたロックバンド「聖飢魔Ⅱ」のメイクを忠実に。これがうまく描けたもんだから調子に乗って飲んでる連中を次々に「聖飢魔Ⅱ」のメンバーに仕立て上げ、自分にはデーモン閣下のメイクを施しましてフルメンバーが勢ぞろい。「これは誰かに見せなきゃもったいない」ということで、長い冬が終わった開放感もあったんでしょうね、近くの地下鉄北34条駅の改札口にズラリとメンバー並びまして「おまえも蠟(ろう)人形にしてやろうかぁー」と、聖飢魔Ⅱの歌のフレーズをがなっていたんですけれども、誰もが顔を伏せて足早に通り過ぎるばかり。「いかんいかん、誰も見てくれないじゃないか」「ならば後輩たちに見てもらおう」ということでフルメンバーがさっそうと夜の街を行進して後輩たちの下宿に向かったのでありました。
「おーい、開けろー」とデーモン閣下ばりの低いトーンで呼び出すと後輩はめんどくさそうに「なんすかー」とドアを開ける。そこには「聖飢魔Ⅱ」のメンバーがズラリ。間髪入れずにデーモン閣下が歌い出す。「おまえをドラえもんにしてやろうかぁー」。青い絵の具を取り出して後輩をドラえもんに仕立て上げ、聖飢魔Ⅱの行進に加えましてさらに後輩宅を次々と襲撃、いつしかその隊列は「顔だけ仮装行列」の様相を呈しながら札幌駅方面に南下を続けてしておりました。
すると恥ずかしくなったのか…
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