教科書の「従軍慰安婦」記述巡り、文科省が異例の説明会

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編集委員・氏岡真弓、同・北野隆一、伊藤和行
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 慰安婦問題を巡り、政府が「従軍慰安婦」という用語について「誤解を招く恐れがある」などとする答弁書をまとめたことを受け、文部科学省が5月、教科書会社を対象に説明会を開いていたことがわかった。検定に合格した教科書について、記述の訂正申請は「6月末まで」と示していた。複数の教科書会社側の関係者によると、同省は文科相による訂正勧告の可能性にも言及したという。

 文科省教科用図書検定規則は、検定済み教科書の訂正は文科相の承認を受けて、発行者が行うと定めている。個別の記述について同省が発行者向けの説明会を開くのは異例だ。同省は「あまりないことだが、国会の議論を紹介する目的で、訂正は発行者の判断」と説明するが、発行者側からは「訂正申請を巡る説明会は聞いたことがない。訂正せよとの指示と受け止めた」との声が出ている。

 発端は、政府が4月27日に閣議決定した答弁書。日本維新の会の馬場伸幸幹事長の質問主意書に、「『従軍慰安婦』または『いわゆる従軍慰安婦』ではなく、単に『慰安婦』という用語を用いることが適切であると考えており、近年、これを用いているところ」と答えた。一方、「いわゆる従軍慰安婦」という用語を使った、1993年の河野洋平官房長官談話を「継承」する立場も記した。

 中学の社会科や高校の地理歴史、公民科の教科書は、2014年の検定基準改正で「政府見解がある場合はそれに基づいた記述」をすることが定められた。

 今回の答弁書を受け、萩生田光一文科相は5月12日の衆院文部科学委員会で「今年度の検定より、教科用図書検定調査審議会で、政府の統一的見解を踏まえた検定を行う」と答弁した。検定済みの教科書については「発行者による訂正申請などの状況を踏まえた上で適切に対応する」とした。

 文科省教科書課は5月18日、中学社会、高校地理歴史、公民科の教科書を発行する20社近くの編集担当役員らを対象に、オンライン説明会を開催。政府の答弁書や国会議事録をもとに、答弁書の内容などを説明した。「主なスケジュール」と題した資料も示し、「6月末まで (必要に応じ)訂正申請」「7月頃 教科用図書検定調査審議会」「8月頃 訂正申請承認」という日程も伝えた。

 複数の関係者によると、発行者側から「申請しなければ訂正勧告を出すのか」との質問が出て、同課側は「勧告の可能性はある」と答えたという。勧告は教科書検定規則14条に規定されているが、これまで出されたことはない。

 同課の担当者は取材に「政府の決定を『知らない』ということがないように情報提供した。訂正申請を求めたわけではない。各社が必要だと判断すれば訂正申請が出てくると思う」と話した。

 一方、ある編集者は「今月中に申請を、と暗に促された形だ」。別の会社の執筆者は「勧告されれば『勧告を受けた教科書』とレッテルが貼られ、教育委員会の教科書採択で不利になると感じた」という。

 「従軍慰安婦」という記述が…

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