急な増水時、旅館を緊急避難場所に 4人犠牲の湯平温泉

中沢絢乃
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 昨年7月の豪雨からまもなく1年。大分県由布市は湯平温泉(同市湯布院町)で一家4人が避難途中に車ごと流されて亡くなったことを受けて、温泉街の旅館10軒を、急激な増水時などに身を寄せる緊急避難場所として使うことを決めた。

 緊急避難場所となるのは、旅館19軒のうち温泉街を流れる花合野(かごの)川の比較的上流や高台にある旅館で、10軒合わせて60室。市は17日、湯平温泉観光協会、湯平温泉旅館組合と協定を結んだ。

 緊急避難場所では、急な大雨などで市の指定避難所への避難が困難になった場合に住民や宿泊客最大190人を受け入れる。避難中は宿泊や入浴、簡易な食事を提供し、市は1泊につき避難者1人あたり2千円を協力金として観光協会に支払う。避難受け入れはおおむね3日以内としている。

 昨年7月7日深夜から8日未明にかけての急激な豪雨では、オリジナルキャラクターの電脳女将・千鶴で知られる「旅館つるや隠宅(いんたく)」の一家4人が車ごと花合野川に流され、命を落とした。最寄りの避難所は温泉街の下流側にある湯平地区公民館だった。一家は温泉街近くの県道537号を走り、避難所へ向かっていたとみられるが、県道は川の増水の影響で寸断されていた。雨が激しくなる前に避難所へ向かうか、自宅の2階などへ逃げるしかない状況だったと考えられる。

 湯平地区公民館はその後、大分県が定める土砂災害警戒区域に新たに含まれたため、市は避難所として使うのをやめた。温泉街の地域住民にとって次に近い主な避難所は車で15~20分ほどかかる市役所本庁舎(由布市庄内町)か、湯布院B&G海洋センター(湯布院町)になるが、いずれも県道537号を通る必要があり、急激に増水した場合や避難が遅れた場合には危険が増す。

 観光協会によると、湯平温泉では昨年の豪雨時に、川から比較的高い3軒の旅館に地域住民50~60人が身を寄せ、長い人は滞在が10日に及んだ。観光協会長の麻生幸次さん(52)は協定締結を受けて「昨年のような豪雨がきたらどうすればいいのか懸念だった。これがベストかは分からないが、やれることをやりたい」と話す。

 市防災安全課の秋吉寅男副主幹(43)は「気象台や県から早く情報をもらい、なるべく早く避難指示の判断を出すようにしていきたい。ただ、突然の災害時にはより高い方に逃げる意識をもってほしい。(旅館への避難は)垂直避難の地域版です」と話す。(中沢絢乃)