増える収蔵品、悩む博物館 全国の6割が「満杯状態」

平賀拓史
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 栃木県立博物館の新収蔵庫が完成し、今春から運用を始めた。収蔵品が購入や寄贈で増え続け、旧収蔵庫は満杯状態だった。収蔵スペースの確保に苦慮する博物館は多い。全国の約6割は収蔵庫が「満杯状態」という。

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 1982年に開館した県立博物館の旧収蔵庫は約2500平方メートル。開館から約40年がすぎ、収蔵資料も70万点を超えた。すき間なく資料が山積みとなり、人の行き来にも支障が出ていた。

 劣悪な環境が県議会などでも問題視され、2018年に新収蔵庫の建設が始まった。地上3階、地下1階で、収蔵庫の広さは1558平方メートルと、旧収蔵庫と合わせた収蔵スペースは1・6倍に膨らんだ。それまで「140%」だった稼働率も約85%に下がった。

 県立博物館では27日まで、「収蔵庫は宝の山!」展を開いている。同館が収蔵する、明治時代の元老大山巌が那須の農場で使っていた馬車や、絶滅したニホンカワウソの標本など200点を展示している。

 展示では資料の保管方法や展示に至るプロセスも紹介。星直斗自然課長は「博物館のバックヤードを見られるまたと無い機会。学芸員の趣味ではなく県民のために資料を集めて保管していることを知ってほしい」。

 日本博物館協会が19年、全国の施設を対象に実施した「日本の博物館総合調査」によると、収蔵庫の使用状況について「9割以上」、または「入りきらない資料がある」と回答した博物館は57・2%に上った。前回調査(13年)より10・7ポイント上昇した。

 博物館に詳しい法政大の金山喜昭教授は「スペースがないため、新たな資料収集や寄贈の受け入れができない施設が増えている」と危機感を募らせる。

 スペースを確保するため、廃校の学校を収蔵庫として使う博物館も増えているという。ただ、廃校が離れた場所にあるケースが多く、金山教授は「結局は放置されたままになり、保存状態も良いとはいえない。学芸員も不足している。人・モノ・金のどれも適正に配置されていない。行政は収蔵資料が公共財であることを認識し、しっかり管理できる態勢を整えるべきだ」と指摘する。

 満杯状態を解消するため、収蔵品を「放出」する例もある。

 鳥取県北栄町の「北栄みらい伝承館」は資料整理が進まず、収蔵品が膨れあがっていた。町は18年、新たに資料収集基準を策定し、「すでに収集している資料と同種および同等未満の資料は収集しない」と取り決め、同館で収蔵していた民俗資料の4分の1を除籍(処分)した。同館が希望者に処分する収蔵品を無料で譲ると広報したところ、県内外から2580件の希望が集まり、473点の収蔵品を譲渡した。

 当時担当だった杉本裕史さんは「収蔵品を捨てるのはどうなのかという批判も一部にあったが、好意的に受け止める意見がほとんどだった」と振り返った。

 金山教授は「無償譲渡は思い切った試み。基準がないまま何でも集めている施設は多い。保管の基準を定めた上で、資料を処分することも念頭においた議論を検討するのが望ましい」と話している。(平賀拓史)