男らしさとは 家父長制社会にポッドキャストで問いかけ

アミン・ブシャバ記者、エコノミストから
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 NPOのスパークニュース(パリ)の呼びかけで、世界13カ国の報道機関15社がジェンダー平等社会の実現に向けた特集「Towards Equality」を展開します。新型コロナウイルスの世界的流行で深刻化する、根強い男女差別や職場、家庭における「男らしさ」「女らしさ」という固定観念――。各国のジェンダー平等の最前線の取り組みに関する記事を世界で同時発信していきます。朝日新聞では紙面とともに、朝日新聞デジタルでも随時、記事を掲載します。今回はモロッコのメディア「エコノミスト」の記事を掲載します。

 男らしさとは何か。昨年11月にモロッコで始まったポッドキャスト番組「マシ・ルジューラ」は家父長制の社会で、それを問い直すことを目標としている。男性を悪者にするのではなく、暴力的な支配や女性蔑視といった伝統がもたらす害に光を当てるのが目的だ。

 立ち上げたのは、ロックダウン都市封鎖)の最中、LGBTや障害者などマイノリティーのための場を提供したいと考えた十数人の男女。ポッドキャストを手始めに、7月にはオンラインのプラットフォームを立ち上げて、写真やビデオなどを通じて議論を促す予定だ。

 「コロナ禍で女性やマイノリティーに対する暴力が露呈しているが、この状況は危機以前からのものだと考えている。それらは男性の行動の結果だ」と番組制作者のスフィアーヌ・ヘンナニさんはいう。「私たちにとって重要なのは、男性にも解決策の一翼を担ってもらうこと」。その目的は建設的な議論を通じて、男性たちを巻き込み、ジェンダー平等を提唱することだ。

 番組名はアラビア語のモロッコ方言で「男らしくない」という意味で、勇気や名誉、強さが欠けていることを指す際によく使われる。プラットフォームの目的は「排他的で有害な男らしさではなく、多元的で包括的な男らしさを提唱することだ」とヘンナニさんはいう。

 男らしさは有害なのか。芸術の、女性についての表現をどう改善できるか。未来の男性はフェミニストなのか。イスラム教において男性はどのような位置を占めるのか。作家や研究者、俳優、映画監督などポッドキャストに登場する様々なゲストが質問に答え、一般市民の証言がゲストの発言を補う。

 最初のシーズンは1回45分のエピソード8本で構成され、配信開始から6万回近く再生された。ヘンナニさんは「若者からの支持がこのプロジェクトの最も良い側面の一つだ」と話す。実際、視聴者の大半は18~35歳の若者だという。

 この革新的な取り組みは若者や家族の間で男らしさについての議論を巻き起こしている。元政治犯とイスラム教徒のフェミニストが登場した回では「彼らのおかげで、預言者の女性に対する態度や家族の中での役割について、父や兄と興味深い会話をすることができました」と21歳の視聴者が番組のフェイスブックに書き込んでいる。

 国内外のメディアでも広く称賛された。国営テレビで取り上げられ、300万人の視聴者を集めたこともある。だが、ヘンナニさんは、最も重要なのは、招かれた高校や大学での討論会だと考えている。

 「ほとんどの若者の中に解放への願いや、絶え間ない疑問、保守的な社会を変えようという意思があることに気がつきました。ジェンダー平等や宗教、公共の場における多様性、さらに伝統の尊重といった問題に年長者よりもはるかに常識的に取り組んでいるのです」(アミン・ブシャバ記者、エコノミストから)