第25回把握難しい保育士の性暴力 犯歴あっても取り消しなしも

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塩入彩 佐藤瑞季
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 全国の保育施設などで働く保育士のうち、過去10年あまりで少なくとも20人が、教え子への性暴力を理由に保育士登録を取り消されていたことが、朝日新聞の調査でわかった。ただ、性暴力などの不祥事の把握は、保育士の自己申告や報道などが頼りの側面がある。多くの自治体が実態把握に困難を感じていると回答した。

 朝日新聞は昨年12月~今年1月、全国の47都道府県と、国家戦略特区として地域限定保育士制度のある政令指定都市仙台市にアンケートを実施した。

 その結果、2010年度から昨年12月1日時点までに、男性52人、女性39人、性別未回答22人が保育士登録を取り消されたと回答があった。不適切な性的関わりが取り消しの原因だったのは男性35人で、そのうち20人が教え子への行為だった。性器など体を触る、触らせる、写真や映像を撮る行為などがあげられた。

 厚生労働省によると、昨年4月現在、保育士に登録した人は全国で累計約166万人で、女性は約158万人、男性は約8万人。

 登録制度が始まった03年以降で男性67人、女性60人の登録が取り消された。ただ、厚労省は「取り消し理由の内訳は把握していない」といい、保育士による性暴力の実態は明らかになっていない。

 今回の調査でも、1自治体は全体の数を含めて回答せず、9自治体は男女別や取り消し内容の内訳を回答しなかった。

 保育士は国家資格で、短大などの養成校を卒業したり、都道府県での試験に合格したりして取得できる。その後、都道府県に登録することで働くことができる。

 禁錮以上の刑を受けた場合や、児童福祉法などに違反して罰金刑に処された場合などは、刑の執行が終了してから2年間は登録ができない。

 しかし、登録の取り消しには、保育士などからの自己申告や、事件を知った都道府県の職員が裁判を傍聴するなどして状況を把握する必要がある。そのため、過去には犯歴のある保育士の登録を取り消せていなかった事案もあった。

 アンケートでは、17自治体が、保育士による性暴力の把握に何かしらの困難や不安を感じていると回答。「都道府県が単独で(犯罪などの)欠格事由に該当した事実を把握する仕組みが確立されておらず、把握が困難」「裁判所の判決内容が都道府県へ知らされる仕組みとなっていないため、取り消しが遅れる恐れがある」「報道された場合は氏名などを検索して確認しているが、同姓同名や改姓している場合があり特定が難しい」などの意見があった。

 学校現場での性暴力については、児童生徒へのわいせつ行為で懲戒免職になった教員が教壇に立つことを防ぐため、失効した免許を再交付しない権限を都道府県教育委員会に与える「教員による性暴力防止法」が5月に成立した。

 保育士についても、実態把握を進め、対策を検討するよう付帯決議に盛り込まれた。(塩入彩)

「また次の被害者が生まれてしまう」

 「保育園は人の命をあずかる場所。何も言えない子どもたちへの性暴力を、もっとしっかり調査をしてほしい」

 千葉県の保育園に娘を通わせていた女性は、そう憤る。娘の担任だった保育士の男(26)が昨年、園児への強制性交などの疑いで逮捕された。

裁判にならないと保育士の過去のトラブルがわからない…。記事後半では、過去の事例や識者の提言を詳述します。

 女性は警察に被害届を出した…

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