リーバイス501、廃棄寸前からの再生 町工場が挑んだ

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土居新平
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 東京・足立の住宅街に、その仕上げ屋はあった。

 創業25年のヤマサワプレス。従業員はベテランの職人ら24人。大手メーカーなどから届く衣料品のアイロン掛けや補修、検針から発送までの下請けを担ってきた。

 その工場内の一画に、折り重なったジーンズが山積みにされていた。高さは2メートルを超える。手に取ると、ぬれた衣類が乾いたような、人が長く着ていたような臭いがする。股の部分が激しく破れたり、茶色く汚れたりしていた。そのほとんどがリーバイスの「501」だ。

ロスで出会った切れ端10t

 2代目社長の山澤亮治さん(46)にとっては、中学時代から履いてきた「デニムのナンバーワン」だ。「ボロボロですけど、これだけ501があるとワクワクしますよね」

 山澤さんが廃棄寸前のジーンズに出会ったのは2019年、米ロサンゼルスを訪れたときのことだ。

 アパレル市場は縮小が続き、あおりを受けてヤマサワプレスの経営にも陰りが出ていた。「次の商売の柱」を探す旅だった。

 そこで古着の仕入れ業者に教えてもらったのが、「捨てられる寸前の501」だった。見せてもらった写真には、大量の履き古したジーンズが映っていたが、どれも太ももから下の部分しかない。聞けば、ショートパンツをつくった後の「切れ端」で、その量は10トンになるという。

 「501」は米リーバイ・ストラウスの中核ジーンズだ。1890年にこの品番が生まれ、ジーンズの原型とも言われる。「自分が大好きな501。もったいない」と山澤さん。帰国後、ショートパンツの「切れ端」に加え、穴あきや汚れで、欧州や東南アジアでも引き取り手がいなかった「501」も合わせ、計20トンを買い取った。だいたい3万5千着分になる。

 買い取った時点で出口が見えていたわけではない。「でも、心が動かされてしまったんです。うちのスタッフと技術なら何とかなると思った」。ヤマサワプレスの技術を使い、商品としての再生をめざすことにした。

古着屋の元店主がくれた助言

 まず、ひどい汚れや臭いを落とさなくてはいけない。以前に担っていた、家庭向けの洗濯代行業の技術を引っ張り出した。

 環境に優しい洗剤に半日つけ込み、ブラシを使って手作業で汚れを落とす。その後、洗濯機で洗い、天日干しにする。

 その生地をどう商品化するのか。「仕上げや補修の技術はあっても、ものづくりは知らなかった」と山澤さん。そこで中学生のころから通った、足立と渋谷の古着屋の元店主2人に頼み、助言をもらった。デザインを決め、生地をつなぎ合わせるなどしてジーンズやスカート、エプロンなどにリメイクした。

 そのままでは使えないパーツこそ、仕上げ屋の手仕事の見せどころだ。ボタンフライと呼ばれる前開き部分、2頭の馬がジーンズを引き合う絵柄の革パッチ、ポケット……。「501に捨てるところはない」。昨年9月に敷地内にショップをオープン。リメイクジーンズは1本2万~4万円だ。ネット販売も始めた。

伊勢丹バイヤーが動いた

 話は、これだけでは終わらない。アパレル業界に賛同の動きが広がっている。

 百貨店大手の伊勢丹新宿店の…

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