仕事と母乳育児の両立を可能に スイス、法律で後押し

マリアンヌ・グロージャン記者、トリビューン・ド・ジュネーブから
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NPOのスパークニュース(パリ)の呼びかけで、世界13カ国の報道機関15社がジェンダー平等社会の実現に向けた特集「Towards Equality」を展開します。新型コロナウイルスの世界的流行で深刻化する、根強い男女差別や職場、家庭における「男らしさ」「女らしさ」という固定観念――。各国のジェンダー平等の最前線の取り組みに関する記事を世界で同時発信していきます。朝日新聞では紙面とともに、朝日新聞デジタルでも随時、記事を掲載します。今回はスイスのメディア「トリビューン・ド・ジュネーブ」の記事を掲載します。

 母乳育児は、短期的にも長期的にも健康に良いなどといった利点がある。世界保健機関(WHO)は2001年から「2年以上」の母乳育児を推奨しており、うち6カ月間は母乳だけで育てるべきだとする。

 スイスは、産休が14週間(ジュネーブでは16週間)で、女性たちがこうした推奨に従うことは簡単ではない。しかし、それが変わるかもしれない。

 14年から、職場での母乳育児を保護する新しい雇用法制が全国で施行されている。子どもが生まれてから1年間、従業員は自宅や職場の授乳室で搾乳や授乳をするために、1日7時間以上の勤務の場合で90分の有給休憩を与えられる。

 スイス連邦統計局によると、女性の7人に1人が出産後に離職しており、職場での母乳育児がしやすくなることは、子どもだけでなく、仕事復帰をためらっていた女性にとってもメリットがある。

 スイスでは、母親の95%が出産直後から母乳で育児し、生後6カ月の乳児の40%が母乳で育てられており、そのうち26%は母乳だけを飲んでいる。

 WHOの指針に沿った手法で模範を示す雇用主もいる。国連職員で、生後6カ月の赤ちゃんの母親でもあるセリーヌさんは、妊娠が分かるとすぐに、女性の上司から母乳育児の権利について知らされた。「1日2時間、授乳や搾乳のための有給の休憩時間があります。1年だけでなく、子どもが2歳になるまで」

 しかし、多くの職場では、授乳の権利を得ることは簡単でない。管理職の感度の高さに左右されるが、病院はその一例だ。

 ジュネーブ大学病院の若手医師、ゲッツィ・マサバンさんには忘れられない経験がある。「私が仕事に復帰したのは、一番下の息子が5カ月半だった20年。最初の1週間、上司はとても親身な(女性の)臨床医でした。彼女は、休憩中の私が緊急事態に対応しなくてもいいよう、ポケベルを預かってくれました。彼女は他のどの上司とも違いました。その後に来たどの上司も、そのような気配りをしてくれませんでした」

 世界母乳育児動向イニシアチブのコーディネーターであり、ジュネーブ乳幼児育児協会のコンサルタントでもあるブリッタ・ブタリさんは、スイスは母子と接する医療従事者のトレーニングを改善すべきだと指摘する。「医療関係者は、母乳育児の利点を過小評価しないことが重要です」

 ボランティアの母親たちの役割は大きくなっている。国際的組織であるラ・レーチェ・リーグは、スイス西部ロマンディとジュネーブで活動しており、集会は母乳育児に関するアドバイスやサポート、信頼できる情報を求めるすべての母親に開かれている。ジュネーブ大学で働きながら生後20カ月の子どもを母乳で育てるメリナさんは、「この問題は健康だけでなく、社会的な問題でもある」と言う。「仕事のために離乳させるのではなく、母乳で育てたいと願う母親にはそうさせる。これが、私のフェミニズムです」(マリアンヌ・グロージャン記者、トリビューン・ド・ジュネーブから)

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