スペインの美術館が進めるジェンダー平等 女性作家に光

アナ・レクエナ・アギラール記者、エルディアリオ・エスから

NPOのスパークニュース(パリ)の呼びかけで、世界13カ国の報道機関15社がジェンダー平等社会の実現に向けた特集「Towards Equality」を展開します。新型コロナウイルスの世界的流行で深刻化する、根強い男女差別や職場、家庭における「男らしさ」「女らしさ」という固定観念――。各国のジェンダー平等の最前線の取り組みに関する記事を世界で同時発信していきます。朝日新聞では紙面とともに、朝日新聞デジタルでも随時、記事を掲載します。今回はスペインのメディア「エルディアリオ・エス」の記事を掲載します。

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 伝統的に、美術館は男性的な視点で管理された文化表現の場だった。スペインでは、美術館や非営利団体が、女性アーティストの作品をより多くの人に見てもらい、ジェンダー平等について文化界の影響力を再考するために、具体的な取り組みを始めている。

 あなたの街の美術館や画廊にある作品が、男性と女性のどちらによるものか気になったことは? スペインでは、「ウィメン・イン・ビジュアル・アーツ」(MAV)という団体が美術館におけるジェンダー格差について取り組んできた。芸術家やアート関係者で作るMAVは12年前から活動を始めた。

 国内の主な美術館では男性芸術家の作品が圧倒的に多く収蔵されており、女性はまだまだ少数派だ。企画展でも同様で、男性の作品がずっと多い。世界有数の文化施設であるプラド美術館(マドリード)では、2016年10月に女性画家の企画展を初めて開催したばかりだ。

 ジェンダーの視点から美術館を再考するには、作品の数以外の側面も重要だ。「美術館の評議員会は大半を男性が占め、意思決定は男性視点。美術館の運営方法をどうするか。展覧会では女性アーティストがどう取り上げられているか。芸術作品が制作された歴史的背景を読み直し、現代の鑑賞者にどう伝えるか――。そういったことに取り組んでいます」と、MAVのローラ・ディアス代表は話す。

 ソフィア王妃芸術センター(マドリード)のマベル・タピア副芸術監督もディアス代表と同じ意見だ。同センターでは、数年前からジェンダーの視点を取り入れようとしており、タピアさんは作品数以外にも変化が起きているという。

 「この美術館では、男女格差について歴史的な負債を清算し、覇権主義・欧州主義・ヘテロ家父長制的な文化の論理を脱構築し、これまでとは別の方法で美術館を作ったり理解したりする方法を生み出そうとしています」とタピアさんは話す。「フェミニズムは、これまでの美術館のあり方を打ち破ろうとしてきました。そのために芸術界で無視されてきた人々を受け入れることも必要です」

 同センターはこの取り組みの中で、不安定かつ圧倒的に女性が多い職業である家庭内労働者やイチゴ摘みの労働者らなどを受け入れようとしている。過小評価され、声をあげられなかった女性アーティストたちからの視点やテーマを追究する、フェミニスト向けの常設展示品ツアーも開いた。

 タピアさんは女性作家がいつも「その他大勢」であり、女性の作品は添え物的なものだという印象を与えないよう、作品の説明の仕方やセンター内のレイアウトを変える必要があると訴える。実際、同センターでは常設展を再編成しているところだ。

 ある展示室では、20世紀半ばのアメリカの理想的な家と、女性アーティストのルイーズ・ブルジョワが制作した巨大な「クモ」の彫刻が対照的に展示されている。別の展示室では、自身の女性器を何カ月間も観察して描いた絵によるインスタレーションを展示。アイダ・アップルブルーグの集大成ともいえる作品だ。

 また、これまで美術史では軽んじられてきた女性芸術家の作品を可視化する目的で、現在開催中の企画展の中心にスウェーデン人アーティストのシャーロット・ヨハネソンを据えた。ヨハネソンの作品は、織機とアップル社のコンピューターを組み合わせたもので、主要な美術館ではほとんど展示されてこなかった作品だ。

 MAVは今後、美術館や画廊が自分たちの運営や活動をジェンダー平等の視点から分析できる自己診断ツールを発表する予定だ。ディアス代表は、こう締めくくる。「私たちは美術館がより人類学的であり、植民地主義的ではない場所にしていかなくてはならない。それは過去と現在に疑問を持ち、収集作品を読み返し、再文脈化するような場所のことです。社会全体を代表するような、多様性を持つインクルーシブな美術館が必要なのです」(アナ・レクエナ・アギラール記者、エルディアリオ・エスから)

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