遺族の気持ち、冤罪の可能性 死刑について考えた

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米田優人 河原田慎一
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N4Uに寄せられた死刑制度への意見
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 死刑制度に賛成ですか、反対ですか? 「究極の刑罰」とされる死刑を巡り、大切な人を失った遺族の気持ちや、無実の人の命を奪う冤罪(えんざい)の可能性を、どう考えればいいのでしょうか。「#ニュース4U」取材班のSNSに寄せられた意見について、専門家と考えました。(米田優人)

 大阪弁護士会は2月、制度の是非を改めて考えてもらおうと、存置(残す)と廃止のそれぞれの立場の弁護士が意見を述べる動画をつくり、ホームページで公開した。取材班は3月中旬、この動画を紹介する記事を掲載し、「#ニュース4U」のLINE公式アカウントに登録している「友だち」に、死刑制度への賛否や動画の感想を聞いた。

 約80件の回答が寄せられ、死刑制度への賛否はほぼ半数に分かれた。

 賛成意見は「被害者救済が一番大事」(埼玉県川口市、56歳男性)、「遺族の苦しみを考えれば、死刑制度は残すべきだ」(札幌市中央区、53歳女性)など被害者感情を挙げる声が多かった。海外の死刑廃止の動きについて「何でもグローバル的に考える必要性はない。凶悪犯罪者には自らの死をもって償わせるのが筋」(東京都町田市、59歳主婦)との声もあった。

 一方、反対意見では「人が裁く限り必ず間違いがある」(長崎市、61歳無職男性)、「冤罪(えんざい)はいつの時代にも必ず起きる」(神奈川県、58歳主婦)といった、無実の人を罰してしまう可能性を指摘する声が目立った。死刑廃止とともに、仮釈放がない終身刑の導入を求める意見もあった。

 大阪弁護士会の動画については「死刑を今も行う国の少なさに驚いた」(静岡県富士宮市、派遣社員、37歳女性)、「終身刑の設置がなければ、(死刑制度の)廃止には反対になった」(大阪府岸和田市、34歳女性)との声も寄せられた。

専門家「議論がかみ合ってない」

 結果をどう見るか、死刑制度をめぐる議論に詳しい桐蔭横浜大の河合幹雄教授(法社会学)に聞いた。

 死刑を容認する理由に厳しい処罰を望む遺族感情を挙げる人が多い一方、死刑に反対する理由を「冤罪(えんざい)のおそれ」とする意見が目立つ。河合教授は「罪の償い方と冤罪の可能性は土俵が違う話で、かみ合っていない」と指摘。「何を前提にするかが共有されておらず、国民的な議論になっていないのが現状」という。

 内閣府が5年に1度実施する世論調査では「死刑もやむを得ない」と容認する回答が2019年の調査まで4回連続で8割を超えた。ただ、河合教授は「『やむを得ない』としている人が、積極的に制度を肯定しているかはわからない。本当の民意が死刑制度に賛成なのか、反対なのか、判断するのは難しい」とみる。

 河合教授によると、フランスはもともと死刑支持の世論が強かったが、死刑廃止を公約に掲げて当選したミッテラン大統領が、死刑廃止論者の弁護士を法相に起用。議会で誤判の可能性などが議論され、1981年に廃止したという。河合教授は「日本でも、政治主導で死刑制度を議論すべきではないか」と話す。

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河合幹雄・桐蔭横浜大教授=本人提供
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報道機関に公開された東京拘置所の「刑場」の「執行室」。右奥の床から壁づたいに取り付けられた金属の輪にロープを通し、天井の滑車からつり下げる=2010年8月27日、東京都葛飾区、代表取材

死刑が執行される刑場はどんな場所なのでしょうか。2010年に公開された際に取材した河原田慎一記者(現・大阪司法キャップ)が振り返ります。

 お香のにおいが立ちこめた厳粛な空間。階段の下をのぞき込むと、薄暗いコンクリート敷きの床と排水溝が見えた。11年前、法務省を担当していた私が見た東京拘置所内の刑場は、今もまったく変わっていないのではないかと思う。

 死刑廃止派だった当時の千葉…

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