28歳の2人 300匹の青い鯉のぼりがつなぐ同じ未来

室田賢
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 300匹近い青い鯉(こい)のぼりが、仙台の空で泳いだ。

 18~21日、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地でのイベント「がんばろう東北シリーズ」。東日本大震災の翌年から続いており、今年は震災10年として大々的に開催された。

 「青い鯉のぼりプロジェクト」はその一つで、球場正面のスペースを利用して掲げられた。子どもたちは鯉のぼりの下で走り回った。揺れる鯉のぼりを不思議そうに見上げる子どもや、一緒に写真を撮る夫婦もいて、皆が同じように笑顔だった。

 プロジェクトの代表、伊藤健人さん(28)は宮城県東松島市出身だ。「東松島以外で、これだけ多くの鯉のぼりが上がるのを見るのは初めて」と喜んだ。

 そして、「この青い鯉のぼりを100年先まで続くお祭りのようなものにしたい」と言葉に力がこもった。

 震災で当時5歳の弟、律君を亡くした。律君が大好きだった青い鯉のぼりを10年前、自宅跡のがれきの中から見つけた。

 空よりも高いところに旅立った律が寂しくないように――。18歳の伊藤さんが、鎮魂の意味を込めて家の前で青い鯉のぼりを掲げたのが始まりだった。

 それからも日本各地から寄せられた鯉のぼりを、東松島市を中心に掲げ続けた。周りの大人に支えられながら、現在まで震災の記憶を後世につないでいる。

 2016年ごろからイベントがあるときに、楽天の本拠地で青い鯉のぼりを掲げるようになった。震災10年を迎えた今年は過去最大規模だ。

 楽天球団の総合企画部、上平晶さん(28)は、入社後で初めて「東北シリーズ」の企画のメイン担当を任された。

 10年前、仙台市内で被災した。東北大に在学中、震災から立ち上がる企業を支援するインターンに携わった。就職先に悩んだ末、「スポーツを通じて東北を笑顔にできるかもしれない」。楽天球団へ就職した。

 今回のイベントでは白い鯉のぼりが用意され、球場を訪れた人たちが青いペンで寄せ書きをした。「ともに前へ」「みんなで手をつなごう」。東北を思う文字が並んだ。

 鯉のぼりを見上げた上平さんは、「復興につながる仕事に携われてよかった。入社した一つの目的を果たせた」と達成感をにじませた。

 学年は上平さんが伊藤さんより一つ上だが、同じ28歳だ。

 現在、東松島市役所に勤める伊藤さんは「100年先までつなげるために、巻き込むことが大事。同じ世代と共有できたことがうれしい」。上平さんも「伊藤さんは心が強い。年齢が近くて、こんな方が東北にいるなんて頼もしいです」。

 別々の道を歩んできた二人が、一緒に東北の未来につながる活動ができたことを喜んだ。

 これからも、この活動を続けたいですか? 

 そう尋ねると、2人は「もちろんです」と声をあわせてうなずいた。(室田賢)