熱狂した8年前と大違い イラン、失望だらけの大統領選

有料会員記事イラン大統領選2021

テヘラン=北川学
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 18日のイラン大統領選挙で保守強硬派のライシ司法長官が当選した。SNSには支持者の喜びの声があふれるが、街中で歓呼する様子は見られない。選挙戦は当初からライシ師の優勢が伝えられ、盛り上がりを欠いた。人々を苦しめる経済制裁を解除できなかったロハニ大統領への失望がにじむ結果となった。

 テヘラン中心部のテヘラン大学前。国政選挙のたびに候補者のポスターがあふれかえる場所だが、今回はほとんど見かけない。掲げてあるのは、投票を促す当局の啓発物ばかり。低投票率が懸念された選挙戦を象徴するかのようだ。

 投票日の18日午前、私はテヘラン北部の住宅地を訪れた。民家の土塀が町並みの古さを際立たせる。1979年の革命を指導した初代最高指導者の故ホメイニ師が晩年を過ごした場所だ。同師の自宅に併設されたモスクが投票所として使われていたが、足を運ぶ人はまばら。内務省によると投票率は48・8%。過去最低となった。長蛇の列ができた8年前とは大きな違いだ。

 技術者のアリレザさん(37)は、改革派のヘンマティ前イラン中央銀行総裁に投じた。「制裁を解除させるには、米欧との交渉が必要。ロハニ師の路線を継承することがイランの利益になる」。ライシ師に入れた元看護師の女性(66)は「法律の専門家で清潔なイメージがある。公平な政治を実現してくれそう」と話した。

 一方、外国車の部品店を営む男性(50)は投票を棄権した。8年前はロハニ師に投じたが、制裁が解除されないことにいらだちを隠せない。

 制裁により、イランとのビジネスができなくなった外国人が相次いで出国。男性は多くの顧客を失った。中東ドバイの取引先には代金を米ドルで支払うが、銀行からは送金できない。このため、ペルシャ湾に浮かぶイラン領の小島までわざわざ飛行機で行く。そこはイランの経済特区で、送金を代行する両替商がある。

 イスラム法学者が大統領よりも大きな権力を握る統治の仕組みにすら、不満を向ける。「今の体制が続く限り、生活が良くなることはないだろう。スーパーでは、ほんの少しの肉しか買わない人も見かける。みんな苦しんでいるが、将来が見通せないのがつらい」

「誰が大統領になっても…」

 ロハニ師が初当選した201…

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