国産ワクチンを待ったほうがいい? 答えは明確です

酒井健司
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 患者さんに新型コロナワクチンについてご説明すると、ときに「国産のワクチンを待ったほうがいいですか?」と聞かれます。現在、日本で承認されている新型コロナワクチンは3種類で、いずれも海外製です。個別接種に使われているワクチンは米国のファイザー社とドイツのビオンテック社が共同で開発しました。大規模接種会場で使われているワクチンは米国のモデルナ社の開発です。イギリスのアストラゼネカ製のワクチンは承認されたものの日本で使われず台湾に無償提供されました。

 もし選べるなら日本製のワクチンを接種したい気持ちはよくわかります。ただ、質問の答えははっきりしていて、国産のワクチンを待つメリットはほとんどありません。国産のワクチンはいくつか開発中ですが、いつ実用化されるのか、そもそも実用化されるかどうかもまだわかりません。ファイザー製でもモデルナ製でも、早く打てるワクチンを打った方がいいです。

 現在使えるワクチンの効果が高いことも、待つ必要がない理由の一つです。ファイザー製とモデルナ製のワクチンはどちらも発症予防効果が95%程度とされています。ワクチンですから一定の確率で副作用は起きますが、どの程度の副作用がどのぐらいの確率で起きるのかデータが豊富であることも先行ワクチンの利点です。全世界で数億人以上の使用実績があります。

 現状では、国産ワクチンの大規模臨床試験を実施するのは難しいでしょう。通常は、ワクチンを接種した群と、生理食塩水等の生理活性のないプラセボを接種した群とを比較するのですが、すでに効果的なワクチンが利用可能なのにプラセボ群を設定するのは倫理的に問題があります。かといって大規模臨床試験をやらなければ効果や安全性に疑問が残ったままになります。

 ワクチン予約が取りにくかった4~5月の段階でなら、プラセボ群がない非劣性試験という方法で臨床試験が可能だったかもしれません。非劣性試験では、プラセボ群とではなく、既存のワクチンを接種した群と比較します。臨床試験に参加すればいち早くワクチンを接種できるのであれば、参加者も集めやすかったでしょうに。

 患者さん個人レベルでは国産ワクチンを待つ必要はありませんが、長期的な視点からは国産ワクチンの開発を続けてもらいたいと考えます。選択肢が多いことはいいことです。現在使用されているワクチンにアレルギーがある人でも、別の選択肢があればワクチンを接種できます。

 それに、ワクチンが効きにくい変異株が出現するかもしれません。コロナ以外の別の感染症がはやる可能性もあります。外国製ワクチンだけに頼っていると、いざというときに十分なワクチンを確保できません。理想は、実用化につながるかどうかがわからない基礎研究も含め、十分な予算が使われることです。広く研究が進むことを期待します。(酒井健司)

酒井健司
酒井健司(さかい・けんじ)内科医
1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。