重鎮判事が引退求められた理由 トランプ時代に苦い経験

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ニューヨーク=中井大助
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 米国の最高裁判事が「戦略的引退」をするのは是か非か――。リベラル派の重鎮であるスティーブン・ブライヤー最高裁判事(82)に対して、引退を求める声が民主党支持者らから上がっている。米最高裁判事は終身制で、銃規制など社会を二分する問題への最終判断を示し、米社会に非常に大きな影響力を持つ。異例の動きの背景には、民主党側にとってトランプ政権時代の苦い経験がある。(ニューヨーク=中井大助

 「ブライヤーよ、引退せよ(BREYER,RETIRE)」

 4月、ワシントンの連邦最高裁の周辺でこのようなメッセージを掲げたトラックが走った。企画したのは、最高裁の改革を求めるリベラル系の団体「デマンド・ジャスティス」。ブライヤー氏に引退を求める嘆願も始めた。

 カリフォルニア大バークリー校ロースクールのアーウィン・チェメリンスキー学長も5月、「後任が、自分と正反対の法的思想の人になるという危険を冒したくないのなら、ブライヤー氏はすぐに引退すべきだ」とワシントン・ポストへの寄稿で訴えた。

 ブライヤー氏に引退を求める動きが出ているのは、最高裁判事の存在がそれだけ大きいからだ。米最高裁は妊娠中絶同性婚など、社会を二分する重要なテーマについて判決を出してきた。どのような判事を指名するかは大統領選でも非常に大きな争点となる。

 バイデン大統領は最高裁の多様性を進めるため、「黒人女性を判事に指名する」と公約している。

 ただ、9人の判事は任期も定年もなく、終身制の職だ。大統領が指名できるかは、空席が生じるかどうかの巡り合わせにもよる。さらに、承認のためには上院(定数100)で過半数の賛同が必要だ。つまり、最高裁判事が死亡などによって欠員が生じた時の政治的状況が、新判事の人選を大きく左右する。そして、その新判事は数十年にわたって影響力を持ち続けることになる。

 民主党側がブライヤー氏の引退を急ぐ理由はここにある。民主党が現在、ホワイトハウス、さらに僅差(きんさ)でかろうじて上院も掌握しているためだ。

 ブライヤー氏は、クリントン…

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