徳島・和田島のシラス 目がぱっと開く新鮮さ

斉藤智子
【動画】徳島県小松島市和田島町のシラスの天日干し=斉藤智子撮影
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 紀伊水道はシラスの好漁場だ。沿岸の徳島県小松島市和田島町の和田島漁協には25船団が所属し、春から12月にかけて3隻1組でシラス漁をしている。網元が自家加工する、ふわふわの「釜揚げしらす」、乾燥させた「ちりめん」は鮮度の良さが自慢だ。

 5月末に和田島漁港を訪ねた。船団は朝6時に出漁する。「バッチ網漁」と呼ばれる漁法で、1隻の船がシラスを探して誘導し、2隻がバッチ(ももひき)のような形の網を引く。2~3時間漁をしたら、1隻が港へ急行し、水揚げする。

 紀伊水道が良い漁場となるのは、回遊するカタクチイワシや黒潮の流れによって、卵が供給されるから。吉野川、那賀川などの大河川が流入しており、えさとなるプランクトンも豊富だ。県内では阿南市、小松島市を中心にシラス漁が盛んに行われている。

 午前10時ごろから、漁船が続々と戻り始める。氷で冷やしながら運ばれてきたシラスは、透明な宝石のように、日光をはじいて輝いていた。陸上で待ち構えていた軽トラックに積み込まれる。漁師がそれぞれ加工場を構えていて、すぐに釜で塩ゆでにするのだ。

 港から、「朝日丸水産」の加工場へ同行した。2代目の和田康則さん(69)と3代目の友樹さん(33)らが捕ったシラスを、康則さんの妻の明美さん(62)が加工場に運ぶ。軽トラックに積み込んでから、釜に入れるまでわずか5分ほど。「鮮度が命と思いますね。生の状態をどれだけ短くするか」と友樹さん。

 素材の味を生かすため、明美さんは、ゆでる塩加減を控えめにしている。さっとゆで上げたら、一部はそのまま、釜揚げしらすとして商品になる。

 大部分は乾燥してちりめんにする。乾燥機を通した後にセイロに広げて天日干し。天候によるが1時間程度、日の光をたっぷりと吸い込ませる。真っ青な空の下、砂利敷きの干し場に四角いセイロが何列も並び、真っ白な織物を敷き並べたかのようだ。

 ちりめんは軟らかすぎず、硬すぎず、握ってつぶれない程度の「食べ頃」に乾燥させる。2007年に乾燥機を導入し、水揚げから出荷に要する時間をスピードアップできたという。昨年からは魚市場への出荷だけでなく、オンラインマルシェを通じた直接販売も始めた。創業から約75年。生産のこだわりは変えず、時代とともに歩んでいる。

 和田島漁協によると、資源保護のため漁は午後2時まで。シラスが多い日は漁を2度するが、取材で訪ねた日は1度で終えた。

 炊きたてご飯に、できたての真っ白な釜揚げしらすを盛り付けた釜揚げ丼の昼食を、朝日丸水産のみなさんとご一緒した。「おしょうゆをちょっとたらしても、おいしい。お好みで」と明美さん。

 徳島特産のスダチで、シンプルに食べるのが定番。ほどよい塩加減のなかに、シラスそのものの爽やかな甘みもほのかに感じて、目がぱっと開くようだった。「新鮮」という言葉に形があって、それを食べているみたいな。(斉藤智子)

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 和田家おすすめの食べ方 〈釜揚げしらす〉スダチとしょうゆで食べるのが一押し。パスタにもよく合う。〈ちりめん〉ちりめん山椒(ざんしょう)にしたり、チャーハンのだしにしたり。スクランブルエッグにかけてスダチ、しょうゆで味を調えてもおいしい。〈生しらす〉上品なだしがとれて、おいしい吸い物になる。

 朝日丸水産 「釜揚げしらす」と「ちりめん」は、産直サイト「ポケットマルシェ」(https://poke-m.com/別ウインドウで開きます)から購入できる。